男子100メートル予選1組を走り終えた山県亮太(28=セイコー)は「ここでこれひくか」と苦笑いするしかなかった。スタート前の静寂で、スタジアムのマイクが風の音を「ゴー」と拾う。正面から吹きつける強い風。その向かい風は、何と8・3メートルだった。

まさに風を切り裂いて、必死に走るも、体は思うように前へと進まず。タイムは10秒95だった。順位は1着で、決勝は午後3時55分となる。先月29日の織田記念を10秒14で制して復活を印象づけ、今回は東京オリンピック(五輪)の参加標準記録(10秒05)を狙っていた。その予選はあまりにも条件が無情だった。

山県は18年福井国体も、9秒台、日本新を狙える絶好調の状態で挑んだが、予選は2・1メートル、準決勝は同1・6メートル、決勝は5・2メートルの向かい風に阻まれた。