陸上男子100メートルの多田修平(25=住友電工)が5日、代表に決まっている東京オリンピック(五輪)へ向け、個人は決勝、リレーは金を目標に掲げた。

大阪市内で会見。「個人でファイナルをずっと4年前から目標に掲げてきた、五輪の準決勝で100%の力を出して、9秒台を出せれば、決勝も見えてくる。まずそこを目指したい」と力を込めた。400メートルリレーでは第1走者を担うのが決定的。「いいスタートを切って、金メダルを獲得できるように」。08年北京五輪、16年リオデジャネイロ五輪と銀メダル。悲願の頂点へスタートから流れを作る覚悟だ。

16年日本選手権は準決勝敗退。リオ五輪でリレー侍が銀メダルを獲得した姿を見て、「悔しい」と「すごいな」という感情が交錯した。「先輩方が日本の選手もここまで戦えるんだと示してくれた」と競技にも熱が入り、翌年から代表入り。今年の東京五輪は、日本選手権覇者となって、代表の切符をつかんだ。「重圧も前向きに捉えられるようになってきた」。また「緊張感がある方がいい走りができるタイプ」とも言った。

その成長の過程では不調も経験した。試合に行きたくない時期も、夜に考え込んで眠れなくなった日々もある。それを乗り越え、たくましくなった。勢いばかりで出場した17年世界選手権ロンドン大会とは違う。「いろいろな経験をして、今回のオリンピックは自信を持って挑める。(17年)世界選手権の時に比べたら、目標もすごく明確に挑める。世界選手権よりはいい結果を残せるのではないか」と語った。

今はすべてを東京五輪のために全力を注ぐ。家族からは祝福のケーキを用意されたが、「僕はオリンピックが近いので、上のフルーツだけをもらって食べました」。まだまだ五輪のスタートラインに立てるだけ。ご褒美は、五輪の後まで取っておく。