国際オリンピック委員会(IOC)の渡辺守成委員(61)が21日、日刊スポーツの取材に応じ、新型コロナウイルスで1年延期した東京オリンピック(五輪)・パラリンピックにおける観客の有無など、開催の形が議論される時期について3月のIOC総会が焦点になるとの見方を示した。

昨年末までのIOC委員の会議では中止などの議論は出たことがないことも明かした。

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渡辺氏は国際体操連盟の会長としてスイス・ローザンヌを拠点に活動している。同所にはIOC本部がありオンラインも含め、さまざまなIOC委員の会議に出席したが昨年末まで、東京大会の中止や再延期について質問は出なかった。

IOCバッハ会長が昨年11月に来日し開催を明言しており「IOCの方針は変わっていない」と渡辺氏。質問が出ない理由を「日本の総理、開催都市の知事、組織委会長、IOC会長が安全に開催すると言っている。海外から見ればこれだけの責任者がそう言えば信頼し、疑問を呈する余地がないのでは」と分析した。

ただ感染状況が好転しない場合、「フルスタジアム」「無観客」「観客の入場制限」など大会の基本方針について3月10日からアテネで行われる「IOC総会で議論が出てくるのでは」との見解を示した。

日本政府は観客の有無を今春に判断する。それでは遅いとの指摘もあるが組織委関係者は「無観客に計画を変更するのは運営上はそう難しくはない」と話す。

一方で渡辺氏は感染者が増加する中、世界各地から開催を不安視する声が上がっていることに理解を示した。「コロナ対策の情報発信の量が少ないから不安に思う。臆測が飛び交うことにつながる」と指摘した。

昨年12月2日に政府、都、組織委がコロナ対策の中間整理を発表。それから1カ月半。日本でも感染者が急増し、国民の不安が増す中で情報が更新されていない現状に改善を求めた。

「大会まで200日を切った。10日に1回ぐらい情報公開の機会を設けてもいいのでは。不安を解消する意味でどんどん情報公開・共有をすべきだ」。IOCの最古参委員で毎度、東京大会を不安視する声を真っ先に上げるディック・パウンド氏が最近、発言を軟化させたことに「彼も何も知らされず不安だったのでは。おそらくその後、しっかりとコロナ対策の情報が入ったのだろう」と語った。

また官僚らが発信するだけでなく、スポーツ界出身者が説明することで世界や国民にも伝わりやすくなるとの持論も述べた。

22日に行う各国オリンピック委員会(NOC)とバッハ氏の会議が1つのポイントだとも指摘。昨春、一部のNOCが選手を東京に派遣できないと声を上げ、延期につながった経緯がある。同様の動きを未然に防ぐため「IOC調整委メンバーが詳しくコロナ対策を説明し、不安を解消する狙いがあるのだろう」と語った。【三須一紀】

◆渡辺守成(わたなべ・もりなり)1959年(昭34)2月21日、福岡・北九州市生まれ。戸畑高時代に体操を始め東海大に進学。その間、2年間ブルガリア国立体育大に研究生として留学し新体操に出合う。84年ジャスコ(現イオン)に入社し、新体操の育成強化に尽力。00年日本体操協会常務理事、09年専務理事。FIGでは13年から理事を務め、16年10月にFIG会長選で当選し、17年1月から同職。18年10月に、日本から通算14人目のIOC委員に就任した。