国際オリンピック委員会(IOC)は9日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が森喜朗会長(83)が女性を蔑視する発言をしたことについて「完全に不適切だ」と指摘する声明を発表した。IOCは4日に「森会長は謝罪した。この問題は決着した」との声明を出していたが一転。世論などから批判の声が収まらない状況を受け、あらためてIOCの立場を示した。

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声明では「アスリート、全ての五輪関係者、市民に対しIOCは引き続き男女平等、連帯、無差別への取り組みを継続していく」とあらためて記した。世論や選手、協賛企業から森会長の発言を批判する声が相次いだことを受けた。

IOCの協賛企業は全て国際的な企業であり高い社会的目標を掲げている。そんな中、「問題は決着した」との声明を出しただけでは協賛企業からの理解は得られにくい。最悪の場合、協賛撤退にまで事態が発展する恐れもあるため「多様性、男女平等はIOCの活動に不可欠な要素。森会長の最近の発言はIOCの公約や(改革指針の)五輪アジェンダ2020に矛盾している」と明確な考え方を示した。

声明では森会長の進退には触れていない。IOCトーマス・バッハ会長は、森会長が調整能力にたけ、元首相という立場で国内外の要人に太いパイプがあることから、絶対的な信頼を置いている。しかし、国際的な体裁を守るために4日の声明から一転、世論に追随するような形で、新たな声明を発表した。

森会長は一時は辞任を意識するも、五輪を成功させる決意から続投を決意。ただ発言から週が明けても、世論の批判の声は収まっていない。関係者によると森会長は現在も発言を反省している一方で、家族や親族に週刊誌などの記者が詰め掛けている事態に、心を痛めているという。

15日からは東京五輪の準備状況を話し合うIOCプロジェクトレビューが開催される。それに先立ち12日、理事と評議員で開かれる合同懇談会で組織委としての立場を明確に示したい考えだ。