東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)が11日、辞意を固めた。今日12日に開かれる組織委の理事や評議員による緊急会合で表明する。招致段階から元首相として国内外の調整に幅広く尽力してきた森氏が会長職から離れることで、五輪運営が混乱を来すことは間違いない。ただ、後任を託された川淵三郎氏(84)が森氏に相談役を依頼したことで、混乱を最小限にとどめたい構えだ。

   ◇   ◇   ◇

女性蔑視発言の責任を取る形で森氏は辞任を決意した。3日、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言し、批判の声が上がっていた。

4日には辞意を固めていたが、周囲の説得などもあり一時は続投を表明。同日の会見では発言を謝罪、撤回をしたものの、世論の批判は収まらなかった。スポンサー企業からも不満の声が続出。これを受け「(森氏が)謝罪し、この問題は終わった」とした国際オリンピック委員会(IOC)は9日、発言について「完全に不適切」と態度を急転。組織委幹部は「これでは持たない」と、最後通告の形になった。

森氏は政官財に広く人間関係があり、元首相として海外の首脳とも太いパイプを持つ。IOCのトーマス・バッハ会長もその背景に絶大な信頼を置いている。

関係者によるとバッハ氏は森氏を会長職にとどめつつ、女性の会長を新たに据え「会長2人体制」を取るように提案。新会長候補には夏冬合わせて五輪7度出場の橋本聖子五輪相が候補に挙がった。しかし、自分が会長に残ってしまうと国内外の世論が納得しないと自身が反対した。

森氏が完全に五輪から身を引けば、開催実現に向け、関係各所がバラバラになり大混乱を来す可能性がある。しかし、川淵氏は森氏に相談役として組織委に残るよう要請。森氏が理事に就くなどして組織委に残る可能性が浮上した。12日の理事、評議員による合同懇談会で議論される見通し。

相談役を依頼した背景には、組織委内に国内外に強い影響力を持つ森氏の調整力を残しておきたいからだ。川淵氏は政治には明るくない。政府、東京都と対等に渡り歩くには、森氏の後ろ盾が最大の味方になる。

また、状況が悪くなれば態度を一変させるIOCが、いつ東京五輪の中止を言い出すか分からない。中止となればアスリートや日本経済にとって大打撃で、そこを抑えるためにも森氏の影響力が必要だった。森氏にも「どんな形であれ相談に乗って一緒に成功させていきたい」と言われた。

森氏はこの日、菅義偉首相や安倍晋三前首相らに、後任を伝えた。新体制がスムーズに離陸できるよう各界に根回し済み。あとは森氏と同年代で親しい間柄にある後任人事に世論が納得するかが、川淵体制の船出に大きく左右する。【三須一紀】