新型コロナウイルスの影響を受け東京五輪・パラリンピックについて政府などは、海外からの観客受け入れを見送る方向で調整に入ったことが3日、関係者への取材で分かった。この日夜、組織委員会や国際オリンピック委員会(IOC)など関係団体のトップ5人が大会について協議する5者協議がオンラインで行われ、海外客受け入れの可否を3月中に判断することを決めた。観客人数の上限規制は4月に決定することも確認された。

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コロナが終息せず逆風が強まる五輪に危機感を募らせる政府は海外客の受け入れを見送り、観客は国内在住者に限定する方向で調整に入った。変異種も増えつつある中、開催に不安を抱える国民も多く、海外客の受け入れ可否を早期に判断しなければ開催への反対意見が強まる恐れもあった。

水際対策は政府の所管で丸川珠代五輪相は「変異株は常に変異を繰り返しており厳しい状況にある。(海外客受け入れは)慎重に検討を進めるべきだ」と5者協議で厳しい考えを示した。政府が率先して提案したことも強調。組織委の橋本聖子会長も「安心安全が保たれている実感が国民になければ(開催は)難しい」と言い切った。

会談の中では海外客見送りの決定には至らなかったが、関係団体の中では1月から見送り案は検討されてきた。複数の関係者によると橋本氏は五輪相だった頃から海外客の見送りを検討してきた。アスリート出身で自身も夏冬7度、五輪に出場している立場から延期により苦労した選手たちを第一に考えている。選手のためにもまず開催にこぎつけたい考えだ。

政府与党では五輪をコロナが終息した先のインバウンド復活のきっかけにしたいと考えもあった。しかし、変異種が増えている状況などから首相官邸内でも海外客受け入れは困難との見方が広まっていた。

橋本氏は判断時期について聖火リレーが始まる3月25日よりも前と提案し、4者から「賛同を得た」。組織委幹部によるとリレースタートの直前は避けたい考えで、3月中旬の決断となる可能性が出てきた。

次の段階として観客人数の上限規制を4月中に決断することも確認した。基準は政府が定めるスポーツイベントの上限規制に準ずる。コロナ禍でも国内ではプロ野球やJリーグなど多くの競技が観客を入れて実施してきた。国内在住者に限定すれば五輪でも観客を入れられるとの考え。約900億円のチケット収入がゼロになり、公金を追加投入する可能性がある無観客を避ける狙いもある。

IOCのバッハ会長は、東京五輪に参加する相当数の各国オリンピック委員会に、選手や大会関係者のワクチン接種を約束していると明かした。バッハ氏は「日本国民、都民、大会に参加する全ての人に対し、安全を提供する。五輪参加者はワクチン接種をできるだけして、連帯感を日本国民に示したい」と語った。【三須一紀】