15キロの増量で、地獄から天国へ。セーリングのフィン級男子東京オリンピック(五輪)代表選考会最終日が14日、相模湾で行われ、瀬川和正(31=米子産業体育館)が圧勝し、悲願の初の五輪代表となった。

「内定できてほっとしている。1日、1日、全力を出して、毎日が1日目だと思ってのぞんだ」。

瀬川は同じ1人乗りだが、フィン級より若干、小ぶりの艇のレーザー級の選手だった。しかし、20年2月に東京五輪代表落選。地獄を味わった。そこから「レーザーの活動をやりきった納得感がなかった」と、フィン級に転向した。

フィン級は世界でも重量級が競うパワー種目。レーザー級の1枚帆の面積が7・06平方メートルに対し、フィン級は10平方メートル。約3平方メートルの差で受ける風の抵抗が倍増する。1日に食べる回数を6回に増やし、陸上トレーニングも交えながら、レーザー級時代の体重80キロ前後から96キロまで増量に成功。今回の選考会、12レースすべて1位という圧勝に結びつけた。

また、「私にはお金がなくて」と、新しい艇は購入できず。借金をして、中古艇を購入。妻で、16年リオデジャネイロ五輪RSX級女子代表の伊勢田愛の後押しはあったが、たった1人で鳥取県・境港をベースに練習に打ち込んできた。

フィン級は、1952年ヘルシンキ五輪から採用されている最古の五輪種目だ。しかし、東京五輪が種目として行われるのは最後となる。日本男子がフィン級で五輪に出場するのは88年ソウル五輪以来だ。「メダルレースに残るのが目標」。瀬川がフィン級最後の五輪で、日本のフィン級界に名前を刻む。