東京オリンピック(五輪)クレー射撃女子スキート代表の“神職スナイパー”石原奈央子(46=古峯神社)は14位に終わった。2日間合計で計125発中、的中は107発。「立て直せなかった。難しい射撃道でした」。男子選手も混じった戦いとはいえ、初日の13位スタートから巻き返せず、ガックリだった。

実家である栃木・古峯神社は約1300年の歴史を誇り、日本庭園を有する広大な敷地には射撃場もある。そこで練習しながら、「権禰宜(ごんねぎ)」として、神社敷地内の清掃などを行う。父敬士さん(77)は、第84代の宮司であり、悲運の経歴を持つ元クレー射撃選手だった。68年メキシコ大会、80年モスクワ大会と2度の五輪の切符をつかんでいたが、それぞれ競技団体の不祥事、日本選手団のボイコットにより、出場は幻となった。

そんな他の人にはない背景を持つスナイパーだが、自身もスゴイ。純心女子学園高までは女子サッカーに打ち込み、FWとして都リーグの最優秀選手に輝いた実績も持つ。国学院大を卒業後は、英国へ語学留学。クレー射撃を始めたのは32歳と遅かったが、16年リオデジャネイロ五輪にスキートの日本人女子としては、史上初となる五輪出場を果たしている。

昨年11月のアジア選手権(ドーハ)で日本勢最上位となり、開催国枠で2大会連続の五輪を決めた。大会は1年延期となったが、父からは「練習する時間が増えたのだから、前向きにやりなさい」と言われたという。また五輪後は、神社を継ぐようにも促されている。「将来的には宮司になれたらいい。ダメと言われるかもしれないですけど」と笑う。現在は競技生活に重点を置いているが、五輪の後は神社の仕事を増やす意向だ。

だから、東京五輪は集大成の舞台だ。「1枚でも多くのクレーを割り続ける。おのずと結果は出ると思います」。地道な努力を積み重ねて、勝負の御利益を引き寄せる。

 

◆クレー射撃スキート 2箇所の装置から1枚あるいは2枚同時に噴出されるクレー(約直径11センチ)を撃つ。決められた8箇所を移動しながら、標的となるクレーを撃ち抜いた合計得点を競う。1920年ごろに米国で猟の練習用として考案された。