【片伊勢武アミン〈上〉】「泣きながら」貫いた文武両道 たどり着いた19歳の夢舞台

日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週月曜日にフィギュアスケーターのルーツや支える人の思いに迫る「氷現者」をお届けしています。

シリーズ第21弾は、片伊勢武アミン(19=関大)を取り上げます。2023-24年シーズンからシニアに転向し、23年11月にはグランプリ(GP)シリーズに出場するなど着実にステップアップを続けるホープです。全2回の上編では、そのGPで感じたことからスケートを志した幼少期、勉強との両立に苦心した高校時代までを描きます。(敬称略)

フィギュア

   

GPシリーズフランス杯でフリーの演技をする片伊勢(ロイター)

GPシリーズフランス杯でフリーの演技をする片伊勢(ロイター)

片伊勢武アミン(かたいせ・たける・あみん)

2004年(平16)2月8日、島根県出雲市生まれ、兵庫県三田市出身。浅田真央に憧れ、小2で本格的に競技を開始。三田市立けやき台中から関大一高、関大へ進む。22年にジュニアGP・バルティック杯を制し、同年の全日本ジュニア選手権で銀メダル獲得。23-24年シーズンからシニアに転向し、23年11月には初めてGPシリーズに出場した。趣味は映画観賞。168センチ。 

GPシリーズフランス杯でSPの演技をする片伊勢(ロイター)

GPシリーズフランス杯でSPの演技をする片伊勢(ロイター)

「自分を褒めたい」フランス杯でGPデビュー

「あぁ、ここが本当の場所なんだ」

両手を目いっぱいに広げ、天を仰いだ。その身一つに降り注ぐ、まばゆいばかりの照明の光。そして、詰め掛けた観衆からの無数の視線。一瞬遅れるように、雷鳴のような拍手の音が鼓膜に響いた。

初となるシニアの国際大会を滑り終えた片伊勢は、少しよろめきながら、それでも最後まで柔和な笑顔をたたえていた。

ここが自分の戦うべき、本当の場所-。

アンジェの氷にそっと手を触れながら、そんなことを感じていた。

2023年11月初旬。GPシリーズ第3戦フランス杯。19歳は、夢の舞台に立った。

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スポーツ

勝部晃多Kota Katsube

Shimane

島根県松江市出身。小学生時代はレスリングで県大会連覇、ミニバスで全国大会出場も、中学以降は文化系のバンドマンに。
2021年入社。スポーツ部バトル担当で、新日本プロレスやRIZINなどを取材。
ツイッターは@kotakatsube。大好きな動物や温泉についても発信中。