【箱根駅伝2023 あえぐ名門〈4〉】反省と収穫の予選会 全日本へ目標を1つ

早稲田大学競走部。東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)で13回の総合優勝を誇る伝統校は、今年1月の大会でシード落ち(総合13位)を喫した。栄光から遠のく苦境に、OBの名ランナー花田勝彦(51)を監督に迎えて再建に乗り出した。来年1月の箱根駅伝を目指し、奮闘する名門校への密着ドキュメント。第4回は4位通過を決めた予選会(10月15日、東京・陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園)の詳報、選手のコメントを伝える。(敬称略)

陸上

400人一斉スタート、位置取りが命運

箱根駅伝予選会。

参加資格は1万メートル34分以内。

長距離を走ることにおいては、すべからくエリートランナーに類する選手たちが400人以上も集う。

そして、自衛隊の滑走路を一斉にスタートする。

国内を見渡しても特殊中の特殊。

「箱根の本番と予選会は全く別物」

どの大学関係者に聞いても、同じような感想が出てくるだろう。

秋の立川に広がる光景は、1年にただ1回。そこでしか見られないランナーたちの群集走だ。

スタートラインに立つ。各校12人の選手たちは縦一列に並ぶ。それも他にはない姿。おのおの、誰が先頭に立ち、どういう順番を組むか。

集団に組み込まれたくないエース級が前の方に陣取り、さあ号砲となる。

上武大で8年連続の予選突破を遂げた監督の花田は振り返っていた。

「練習でも縦並びでやりましたね。試走の時に駐屯地内で実際に並ばせて。周りもいるので、後ろの方は出にくいんです」

挟まれて身動きが取れず、転倒も怖い。位置取りの偶然が命運を分ける可能性もある。

いくら突出して速い選手がいても、結局は10人の総合タイム。知略が問われる。

箱根駅伝予選会、400人以上が一斉にスタート

箱根駅伝予選会、400人以上が一斉にスタート

エース井川と山口は集団から前へ

各自の走力と役割を胸に、21.0975キロのレースが始まった。

大集団は、絵本「スイミー」に描かれる魚を思い起こさせる。小魚が集まり、大きな魚を模倣する姿に似て、しかしその動きは速い。

各校のトップ選手が集う第一列から、その大魚の口が伸びるように何人かが小さな集団を作って飛び出していく。

早稲田のエースで1万メートル27分台を持つ井川龍人(4年)と、ルーキーの山口智規(1年)が外国人留学生の後ろから滑走路を進んでいく。

2人の役割は「フリーマン(単独走)」。少しでも後続の仲間を楽にする。そのために、大集団に埋もれず、1秒でもタイムを削り出すために先を急ぐ。

スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。