【箱根駅伝2023あえぐ名門〈8〉】所信表明の起用と花の区間の条件/1,2区

早稲田大学競走部は、47回連続92度目となる箱根駅伝を総合6位で終えた。6月に就任したOBの五輪ランナー花田勝彦監督のもと、選手たちの奮闘を夏から密着してきた大型連載は第8回から、箱根路で各ランナーが示していた「早稲田らしさ」の価値を深く見つめていく。まずは往路の1、2区。1年の間瀬田純平、2年の石塚陽士の思いからスタートを切る。(敬称略)

陸上

【最後に動く往路順位グラフとメンバー表】

1年生起用に込められたメッセージ

東京・大手町、1月2日午前7時59分。

2列に並び、合計21人のランナーがスタート地点に立つ。

前列が前回大会のシード10校、後列が予選会を勝ち抜いた10校に関東学生連合の11人のランナーと定められている。

中央から順位の良いチームが配されていく。

「本当に走るんだなあ」

早稲田の1区を任された間瀬田は、見渡す景色に、いつも映像越しに見ていた場所を思い出した。

周囲のそびえるビル群。新型コロナウイルスの影響で過去2年間は自粛要請された沿道の応援は解禁されたが、スタート付近は立ち入り禁止となっている。

大都会のど真ん中、21人のランナーだけに許された独占的な時間と場所がそこにあった。

ずらりと並んだ他校のライバル達。間瀬田は2列目の中央付近に陣取り、ちょうど前には前回覇者の青学大、2位の順天堂大の背中があった。

毎年繰り返されてきた往復217・1キロの争いは、シード外を意味する後列からの下克上も何度も彩ってきた。

いまは手の届く背中を、もう2度と見る事なく終わるのか、それとも勢いよく抜き去っていくのか。

2列目の野心こそが、レースを面白くする。

前回13位のシード落ちの屈辱から予選会4位通過の早稲田も、十分その資格はある。

「2区からは先輩達がいる。自信を持って監督が送りだした選手がいる。安心して走ろう」

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。