150秒にかける青春〈番外編1〉あまりに尊い1シーン、メンバー外の部員が起こした奇跡

ジャパンカップ日本選手権を目前に控え全員の心が1つになった瞬間があった。それは大会には出ない1人の生徒が起こした奇跡だった。箕面自由学園はデビジョン1で4連覇を達成。デビジョン2ではA(Bチーム相当)が2位、B(Cチーム相当)が3位に健闘。全部員でつかんだ日本一の称号だった。(敬称略)

その他スポーツ

デビジョン2で2位になった箕面自由学園A(Bチーム)のメンバー(箕面自由学園提供)

デビジョン2で2位になった箕面自由学園A(Bチーム)のメンバー(箕面自由学園提供)

デビジョン2で3位に大健闘した箕面自由学園B(Cチーム)のメンバー(箕面自由学園提供)

デビジョン2で3位に大健闘した箕面自由学園B(Cチーム)のメンバー(箕面自由学園提供)

東京出発前夜、みなが見守った光景

忘れられない光景がある。

東京へ出発する前日、大阪での最後の調整は夜まで続いた。

練習が終わりに近づいた頃、片隅に人だかりができていた。

奥では1人、黙々とタンブリングを繰り返す生徒がいた。

翌日にはB、Cチームがジャパンカップ本番を迎える。

Aチームの準決勝は2日後だった。

そのメンバーに、彼女は入っていなかった。

それでも必死に、成功するまで続けた。

2回、3回と着地に失敗する。

その度に、見守っていた部員たちの声が響く。

「頑張れ~!」

「もう1回!」

監督の野田一江も、残っていたコーチ全員も、その景色を見ていた。

そして、5回目。

ついに成功する。

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編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。