呼び出し次郎、最後の土俵 15歳年下の妻が支えてくれた相撲人生
立呼び出しの次郎(64=春日野)が、初場所限りで定年となります。
1978年(昭和53年)に初土俵を踏んでから47年。決して順風ばかりではなかった道のりでした。
15歳年下の妻が支えてくれました。
大相撲
◆次郎(じろう)本名・西出和夫(にしで・かずお)1960年(昭和35年)1月19日生まれ、千葉県出身。高校卒業と同時に三保ケ関部屋に入門し、呼び出しとして1978年春場所初土俵。1995年初場所から十両呼び出し、2001年初場所から幕内呼び出し、2002年秋場所から三役呼び出し。2013年九州場所から、三保ケ関部屋の閉鎖に伴い春日野部屋へ移籍。2024年初場所で立呼び出し(たてよびだし)となった。2025年初場所限りで定年。中島みゆきのファンで、好きな曲は「ファイト!」。163センチ、62キロ。妻・桃子さん。
「さみしさもあるし、さっぱりした感じも…」
「ひが~し~、てる~の~ふ~じ~…」
本場所が順当に進めば、千秋楽の結びの一番は、この呼び上げが聞ける。
立呼び出しの次郎にとって、最後の晴れ舞台になる。
初場所の中日8日目、次郎は65歳の誕生日を迎える。定年となる。よって、今場所が最後―。
「あっという間って感じはしますよね。ちょっとさみしいなと思います。さみしさもあるし、さっぱりした感じもあるし、その気持ちが半々ぐらいっていう感じですね。もうちょっとやりたい、でもちょうどいいかな」
次郎が不機嫌な時を見たことがない。
人当たりが柔らかい。呼び出しの最高位になっても、偉そうにしない。実直とした口調に、人柄がにじむ。
もともと相撲が好きだった。千葉県習志野市の自宅から、蔵前国技館まで観戦に行ったこともあった。高校卒業を前に、日本相撲協会に手紙を書いた。
「お相撲さんになれるような体形じゃないですし。近視でちょっと目が悪かったから、行司さんは無理じゃないかと思って…。呼び出しだったら、水つけとかで(力士を)近くで見られるんじゃないかと」
水つけ―。
力士は土俵に上がると、勝った力士もしくは控えの力士から清めの水をわたされる。これを水つけという。
ひしゃくでおけから水をすくって、力士にわたす。これが呼び出しの仕事の1つ。この仕事も通称「水つけ」。
将来、この「水つけ」が、次郎の人生を左右するとは、この時は夢にも思っていなかった。
もともと北の湖にあこがれていたから、北の湖が所属する三保ケ関部屋を希望して入門した。
1978年3月。春場所を控えた時期、三保ケ関部屋の大阪宿舎に入った。
そこで横綱北の湖と初対面。北の湖は部屋で雀卓を囲んでいた。挨拶すると、こう言われた。
「呼び出しは、きついぞ」
横綱の言葉は、その後数年かけて痛感することになる。
次郎の修業時代
本名は和夫だが、先輩に一夫がいたため、別の名前をもらうことになった。三保ケ関部屋には呼び出しの兄弟子、拓郎がいた。
「拓郎の次だから、おまえは『次郎』な」という理由で、次郎と命名された。今となっては、名付け親が誰だったのか覚えていない。
今よりもずっと、修行の色が濃く残り、鉄拳制裁も珍しくない時代だった。
部屋住みだった若いころ、夜中に関取衆に起こされて買い物に走らされることもあった。
巡業に出ても気は休まらない。呼び出しだけで旅館に泊まることが多く、雑用に追われた。
「昼の巡業が終わっても、宿に着くと各部屋の兄弟子にあいさつに行って、風呂に入れるかどうかを確認して、先輩たちに『お風呂入れます』って言いに行く。その先輩が風呂から出たら、次の先輩に声かけに行ったり…。それから今度は、ご飯の給仕。先輩がご飯を食べる時は正座して給仕して、水割りを作ったり。『じゃあ、そろそろ風呂入ってこいよ』と言われて風呂に入り、戻るとまだ先輩は飲んでるから給仕。それがまた長いんです(笑い)。今はそんなこと、まるっきりないけど。10年近くは、給仕をやったかな…。入ったばかりのころは、本当にこれを続けられるのかなと思って、やめたいなという気持ちになったけど、なんとかね。今振り返って考えると、本当に大変な時期は最初の2、3年くらいだったのかもしれないな」
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1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。
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