横綱審議委員は何を語ったのか? 豊昇龍を横綱に推挙した理由と指摘した懸念
初場所で優勝した豊昇龍(25=立浪)が、74代横綱に昇進しました。
初場所千秋楽の翌日、横綱審議委員会(横審)は定例会を開き、満場一致で豊昇龍を横綱に推薦すると決めました。
「満場一致」ではありましたが、横審委員の全コメントを聞くと慎重な意見があったこともうかがえます。
横審の山内昌之委員長(77=東大名誉教授)の会見全文、そのほかの8人の委員全員のコメントを紹介します。
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大相撲
横綱審議委員会(横審)メンバー※2025年1月27日現在
| 氏名 | 主な肩書き | 就任年月 |
|---|---|---|
| 山内 昌之 | 東大名誉教授 | 2015年3月 |
| 都倉 俊一 | 作曲家、文化庁長官 | 2015年3月 |
| 丹呉 泰健 | 元日本たばこ産業会長 | 2019年2月 |
| 大島宇一郎 | 中日新聞社社長 | 2020年1月 |
| 池坊 保子 | 元文部科学副大臣 | 2022年3月 |
| 紺野美沙子 | 俳優 | 2022年3月 |
| 大島 理森 | 元衆議院議長 | 2023年1月 |
| 上原 茂 | 大正製薬社長 | 2023年1月 |
| 鹿島 茂 | フランス文学者 | 2024年2月 |
◆横綱審議委員会とは日本相撲協会の諮問機関で、1950年5月に設置。昇進問題など横綱に関する、さまざまな案件について協会からの諮問に答申する。委員は協会から委嘱され、定員は15人以内。現在の規則では、任期は2年で最大5期10年まで。委員長は2期4年まで。報酬はない。
◆横審横綱推薦の内規
(1)横綱に推薦する力士は、品格・力量が抜群であること。
(2)横綱推薦に対しては、横綱審議委員会は大関で2連続優勝した力士を横綱に推薦することを原則とする。
(3)第2項に準ずる好成績を挙げた力士を推薦する場合は、全委員の3分の2以上の決議を必要とする。
(4)品格については、協会の確認に基づき審議する。
「星以上の力が左右した」
山内昌之委員長の記者会見全文
―まず幹事社から何点か質問させていただきます。豊昇龍関の横綱昇進について議論があったと思います。その結果から教えてください
横審委員全員の一致で推挙という運びになりました。
―委員は9人全員出席ですか
そうです。
―委員長の賛成理由を教えてください
はい。やはり内規における優勝もしくは準優勝ということでの2場所連続という、この内規に合致しているということが1つ。2つめは、今回の優勝というものは星だけみると12勝3敗という数字ではありますけども、実際にはともえ戦を通して17回戦った。これは大変、ある意味では試練を受けた。しかもその試練に勝った優勝ということが高く評価されました。3敗は確かに平幕相手でありまして、これは今後、新横綱の課題として残ると思いますが、いずれも前に出た形で、相撲の勝負、力において負けたのではないという点を私としては見たかった。役力士には星を落としていないというのは、逆に言えば、上位でともえ戦も含めて、結びから3回連続で戦っていくという底力、それから精神力というものを評価したい。
3敗して普通はそこで横綱が遠のいたというふうに考えがちでありますし、そこで脱力感におそわれるのが人間としては普通であるというところかなと思うところですが、相撲の世界で力をつけて名を成そうという人間はそこからが勝負だということをまざまざと見せつけてくれた。勝負の世界は何が起こるか分かりませんから、最後の最後に非常にインプレッシブな印象的なそういう勝ち方をする。そしてともえ戦という、これは天の配剤という結果になりましたけど、ドラマチックな舞台をまさに提供してくれたという点で、運が彼には残っていた。その運を見事にとらえて勝つという、ドラマを演出し、かつ主演になったということは、私は何度も申しますように、相撲は国技であり、かつ、現代において興行としてほかのスポーツと比べて遜色のない、近代、現代競技でもあるという点。そういう点のドラマ性というものは、相撲の世界において、角界を担っていく横綱としてもふさわしいものだろうと私は判断しました。
従って、星以上のある意味では力というものが左右したということは、認めざるを得ないのではないか。ぜひこの点を皆さまにご理解いただければと思います。
―直近2場所を見ることが基本だが、3場所前は8勝、あるいは起点が優勝でない。その点はどう判断されましたか
そうですね。これはやはり、なんていうのか、大きい問題だと思いますが、令和6年、2024年の九月場所だったと思いますが、8勝7敗で終わったのは事実ですが、七月場所の12日目に琴櫻と大変力の入った相撲をして、右の股関節だったと思いますが、そこを負傷して、まああの、その時点で9勝3敗だったわけです。それで13日目で休場したということになります。それをふまえて出てきた場所が九月場所だったわけですが、そこでそういう成績しか取れなかったというのは、やはり前場所の力相撲などの挫折の結果でもあるという点を私は見たいと。しかも相手が琴櫻を相手にして負ったケガであったという点など。琴櫻と戦った上での実力を十分に発揮できない結果になったけど、ある意味名誉な負傷のようなところがありまして、それを克服して、先場所2024年、令和6年の11月場所は13勝2敗となったわけでありまして、これも立ちはだかったのは琴櫻だったわけですが、琴櫻相手に1敗、苦杯をなめたわけですが、そのような試練というものに打ち勝ち、今場所はそうした点で本来の実力に近い力を発揮した。こういう流れの中で私は見ていいのではないかと思ったわけです。
―直近2場所とも横綱が休場もしくは引退。自らが一番上の番付だったにもかかわらず、数字的には低水準。その辺はどう議論されましたか
はい。これは皆さんご案内のように、豊昇龍の課題というのは大関昇進以前において特に顕著でありましたが、立ち合いにおけるある種の駆け引き、それが少し範囲を超えるとじらしとか、あるいは、やや上位力士としてはいかがなものかという立ち合いが目立ったと思うんですよね。それと2つめには、一種の、外連というと少し適切ではないかもしれないけど、首投げだとか小手投げとか土俵際、そういう中でかなり強引な投げを打つようなことがありました。今場所も完全に消えたわけではないけども、そういうような強引な技が姿を消して、とにかく前に出て行くというこういう相撲の基本に立ち返るような、力とスピード感にあふれた相撲を発揮したという。
おそらくですね、この本格的な型というもの彼は今身につける、自分のものにしようとする、そういうプロセスと、かつてのような立ち合い、一種外連のような相撲で、スキルということだけでやろうとしていた時代と、これからは本当の力、本格相撲としてやろうとしている、そういう力のせめぎ合いの過渡期にあるのではないかというのが、先場所の2敗、今場所の3敗になったのかなと思います。
これは私は、横審のほかの委員たちからも言葉がありましたけれども、非常に余力がまだあると、彼には。つまりのびしろがあるということです。のびしろがあるということと、非常に長い期間、横綱として活躍できるような素質をもっているのではないかという前向きな評価が2つ出ております。この2敗、3敗は、そういうものにむけたある種の試練と考えているのです、私は。ほかの委員もだいたいそういうものでありました。
―ちょっと重なってしまう部分もありますが、あらためて新横綱に期待することを教えていただければ
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1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。
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