【藤ノ川の15日間】首を痛め、流血にめげず、千秋楽に歌った「もうひとつの土曜日」
名古屋場所で新入幕を果たした藤ノ川(伊勢ノ海)が、15日間を完走しました。
幕内最年少の20歳。身長176センチは3番目に小さく、体重117キロは2番目に軽い「小兵」ながら、10勝を挙げて敢闘賞を受賞しました。
傷だらけになりながら乗り切った15日間を振り返ります。
大相撲
◆藤ノ川成剛(ふじのかわ・せいごう)本名・斎藤成剛。2005年(平成17年)2月22日生まれ、京都市出身。5歳から相撲を始め、埼玉栄高3年時は相撲部主将。伊勢ノ海部屋に入門し、「若碇」のしこ名で2023年初場所初土俵。19歳だった2024年九州場所新十両。新入幕と同時に、伊勢ノ海部屋伝統のしこ名「藤ノ川」に改名した。父は元幕内大碇の甲山親方。次男は幕下碇潟、三男は埼玉栄高在学中。176センチ、116キロ。
疲れすぎた15日間
名古屋場所の激闘を終え、藤ノ川は心身共に疲れ切っていた。
千秋楽の翌日は、何もできなかった。
「15日間が終わった後の疲労感がすごかった。疲れすぎて、何もしていないかもしれないですね」
名古屋場所は10勝5敗で敢闘賞を受賞。知人からは祝福のLINEが多数届いていたが、疲れすぎて返信は後回しになってしまったという。それほど、体力を消耗する幕内の戦いだった。
その2日後、東京に戻り、パスポートの取得に出向いた。秋場所での幕内が確実になったため、10月は幕内力士としてロンドン公演に向かうためだ。
そして8月3日から夏巡業開始。藤ノ川には、同7日の茨城県古河市での巡業中に話を聞いた。
若碇から藤ノ川に改名して臨んだIGアリーナでの名古屋場所。15日間を振り返ってもらった。
負けても納得の初日
●(突き落とし)草野
「藤ノ川」としての初日は、同じ新入幕の草野と対戦。十両で対戦した夏場所は敗れており、今場所も及ばなかった。しかし、内容は悪くない。
相手の突きをしのぎ、突き返して逆襲。もろ差しで寄ったが、土俵際で突き落とされた。若手同士の攻防ある素晴らしい取組だった。
「内容的には悪くなかった。このまま(2日目以降も)変えずにいこうと思って。あの怪物さん(草野)は、あんぐらいの相撲を取るから。ああいうところで、幕内の土俵の厳しさを感じた。もっと厳しくいかないと。というのを初日から分からしてもらいました」
敗れたものの、前向きになれる幕内初日だった。
切り替えた2日目
●(寄り切り)正代
相手得意の右四つで胸を合わせるかたちになってしまい、動きを封じられた。連敗スタートも「うまくやられました。もう切り替えていきました」。
考え込むようなことはなかったという。
「初日だけだそうと。そっからまたどうせ流れも返ってくるから」
首を痛めた3日目
○(押し出し)英乃海
新入幕初白星。記念すべき1勝だが、勝った直後から様子がおかしかった。
頭で当たり、もろ差しになって辛抱強く寄った。しかし、立ち合いで首を痛めてしまった。
「やべえと思ったっす。その影響で今(8月7日)も相撲が取れていないです。首から背中の裏までしびれていたんで」
取組後から、首から肩にかけてアイシングを施していた。この痛みとは、本場所中ずっと付き合うことになってしまった。
3針縫った4日目
○(はたき込み)琴勝峰
常に主導権を握り、もろハズで攻め込んだ。ただし、土俵際で突き落とされ、両者同時に土俵外へ。軍配を受けたが物言いが付き、取り直しとなった。
取り直しの一番は、相手の突っ張りをあてがい、はたき込んで勝った。立ち合いでかち上げられた際、左の眉尻を切った。
「(首の)ケガをしているんで、気合を入れないと勝てない。一発、相撲を取ったら、もう痛みはなくなります。アドレナリンが出て。終わったらめちゃくちゃ痛かったですよ」
首だけでなく、切り傷も負った。その日の夜、病院で3針縫った。切ったことも、縫ったことも初めてだったという。
結果的に優勝した琴勝峰に土をつけたことは、殊勲の勝利でもあった。
2勝2敗の五分に戻した。
あこがれの相手に勝った5日目
○(つり出し)翠富士
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1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。
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