【幟の物語〈上〉】西岩親方が木村庄三郎に贈った昇進祝いの幟 知られざる2人の絆
本場所の会場を、多くの幟(のぼり)が彩っています。大相撲の風物詩でもあります。
九州場所には、幕内格行司の木村庄三郎(49=田子ノ浦)の幟が立っています。送り主は、西岩親方(49=元関脇若の里)。2人に話を聞くと、幟を見る目が変わります。
大相撲
親方から行司へ贈る幟
九州場所が行われている福岡国際センターの前には、多くの幟が立っている。これだけで、大相撲が開催されていることが分かる。
会場正面にある大通り、石城町487号線に沿って並ぶ幟の1つが目についた。
「祝 幕内格昇進 木村庄三郎さん江」
送り主の欄には、「西岩部屋 西岩忍」とあった。
幟は、力士や部屋に向けたものがほとんどで、行司など裏方へは数本。1本数万円で作れるが、1人1本、1部屋1本しか立てられない。そのため、関係性が深い後援者や企業だけが贈り主になれる。
親方が行司に幟を贈ったケースは見たことがない。
庄三郎と西岩親方は、1学年違いの兄弟弟子の関係にある。ともに元横綱隆の里の鳴戸部屋に入門した。
1976年(昭和51年)1月12日生まれの庄三郎は、中学卒業と同時の1991年3月に行司として初土俵を踏んだ。当時は木村慶一郎を名乗った。
1976年7月10日生まれの西岩親方はちょうど1年後の1992年3月、力士として初土俵を踏んだ。しこ名は、本名の古川(こがわ)だった。
鉄拳制裁が当たり前だった時代。とりわけ鳴戸親方は厳しいことで有名だった。逃げ出した弟子たちは何人いただろう。2人は耐え忍んで、角界を生き抜いてきた。
2人の経歴を比較すると、以下の表になる。
| 西岩親方 | 年 | 木村庄三郎 |
|---|---|---|
| 7月生まれ | 1976年 | 1月生まれ |
| 1991年3月 | 木村慶一郎として初土俵 | |
| 古川として初土俵 | 1992年3月 | |
| 21歳で新十両、若の里に改名 | 1997年11月 | |
| 新入幕 | 1998年5月 | |
| 新小結 | 2000年11月 | |
| 新関脇 | 2001年1月 | 幕下格に昇進し、木村隆男に改名 |
| 2008年 | 十両格に昇進 | |
| 引退、年寄「西岩」を襲名 | 2015年9月 | |
| 独立し、西岩部屋を創設 | 2018年2月 | |
| 2025年1月 | 幕内格に昇進、木村庄三郎を襲名 |
珍しい縁
幟には「祝 幕内格昇進」とある。1月の昇進祝いが、なぜ今なのか。
西岩親方に聞いた。
「去年の11月に昇進が決まってから、ぜひ幟を立てたいと思いました。1月場所で立てるつもりで作ったのですが、本数の関係で国技館には立てられない。東京は立行司だけ。3月(大阪)も7月(名古屋)も限りがある。確認しないで作ってしまったのですが、九州なら立てられると聞いて、これまで温めておきました。
同じ部屋で同じ釜の飯を食った仲間です。節目節目にはお祝いしたいという思いがありました」
西岩親方は庄三郎に、夏の装束も贈っている。
それほど、2人の絆は固い。
西岩親方(当時は古川)が新弟子検査を受けた時、付き添ってくれたのが庄三郎(当時は慶一郎)だった。
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1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。
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