山本です。宇都宮競輪開設69周年「ワンダーランドカップ争奪戦」は、中川誠一郎(39=熊本)の快速まくり&通算400勝で幕を閉じました。2角からの仕掛けで上がりタイムは13秒4。初日のバンク新13秒1に目が行きがちですが、踏んだ距離を考えてもすばらしい時計です。

G3制覇&400勝を達成した中川誠一郎。今開催はまさに「パワー全開」でした。半端ないって
G3制覇&400勝を達成した中川誠一郎。今開催はまさに「パワー全開」でした。半端ないって

 さて、G1高松宮記念杯直後の一戦とあって、木暮安由との競りについて語った武田豊樹も注目されましたが、宇都宮でも競りが話題に。準決10Rで南潤の番手を川村晃司と競った“漢(おとこ)守沢”こと、守沢太志の存在が光りました。

南潤の番手で競り負けながらも立て直した守沢太志は苦しそうに引き揚げてきた
南潤の番手で競り負けながらも立て直した守沢太志は苦しそうに引き揚げてきた

 実はこのレース、伏線があったのです。当初は、根田空史の番手を地元長島大介が主張。これで大槻寛徳と守沢太志の目標がなくなりました。守沢と長島は同期。ましてや長島の地元では競りに行きにくい。そこで大槻が根田の番手を主張し、一方の守沢は南の番手でそれぞれ競ることになったので。ところが、一度は覚悟を決めたはずの長島は、先輩方に説得されて自力へとコメントを変更。守沢だけが競る形になった、というのが経緯です。

 守沢は「全部、長島が悪いんですよ」と、冗談まじりに笑っていましたが「1度競ると言ってしまったしあいさつもしたので。勝負します」ときっぱり。川村に加え、松浦悠士まで参戦した大競りには負けたものの、そこから立て直しての3着はお見事でした。普通できひんやん。レース後「もう競りません」と苦笑いしていましたが(笑い)。

 決勝も、なんと単騎竹内雄作の先行(しかも、9番手からの押さえ先行。これもすごい!)の番手を武田豊樹と小松崎大地が奪い合う展開に。そこで中川に展開が向きました。

 宮杯も宇都宮もそうですが、やはり競りは注目度も高く、また見ているこちらを熱くさせます。以前、場内を歩いていたとき、お客さんが「競りは競輪の華や!」と、声を上げていました。大ギア時代の競輪では「(位置を)決めず」というコメントが多く、競ること自体、優勝を狙うには決して、合理的とは言えない不利な作戦です。それでも、己の意地、プライド、信条をかけて戦う、尊重すべき作戦であり、選択肢だと思うのです。ただの恨みやけんかではありません。先行のスタイルも、競りも選手の生き様そのものだ、と改めて感じた開催でした。【山本幸史】