黙っておれん! 日刊スポーツ評論家の中野浩一氏が、激闘の日本選手権(ダービー)後に「ザ・提言」を緊急寄稿した。コロナ禍に危機感を抱き、年末恒例の「ザ・提言」を待たず、競輪界に活を入れる。

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コロナ対応で競輪界はグレードレース(G3以上)を除けば、S級も7車立ての開催ばかりだ。今は7車の競輪が「日常化」している。だが、7車立て12R制を見ていても、本当に「質の高いレース」を提供できているのか、はなはだ疑問だ。

ウイルスを持ち込まないよう、補充を入れないという方針は理解できる。ただ、12R制にこだわり、5車立てなどの欠車で開催をする意味があるか、疑問だ。特に、開催前から欠車という現状は興ざめする。

何も全てが9車で、とは言わない。A級までは7車の力勝負でいい。新人が活躍するだろう。だが、S級は特に、9車の濃密なレースを提供することこそが、今できる真のファンサービスではないか。欠車のレースはいわば欠陥商品だ。

日本選手権(ダービー)4日目のゴールデンレーサー賞は、いいレースだった。それは9人が前へと踏んでいたからだ。だが、7車では最後尾でも7番手だから、単調なレースになる。私が現役時代ならいつでもまくれると思っただろう。レースカットをしてでも、S級は9車。今は全国で車券が買える。1場12R制にこだわらず、おもしろい番組を組んで、1つのレースをじっくり検討してもらう。売り上げが悪ければ、その番組が悪いということだ。

今、日常が戻った時のことを本当に憂慮している。今まで画面でしか見られなかった、新たに競輪を覚えた人たちが本場に来て「競輪ってすごいね」「迫力が違うね」と言ってくれるような未来を望む。今のままで満足したら、新たにファンになってくれた人たちも一過性に終わる。選手、審判、番組、施行者、そして記者も含め、今こそ、危機感を持ってもらいたい。