ミスター競輪・中野浩一氏(日刊スポーツ評論家)は、中川誠一郎(39=熊本)を優勝候補に挙げた。
別府競輪で初めてのG1も、今日が最終日。九州勢でただ1人予選を勝ち上がった中川は、準決でも強烈なまくりでパワーを見せつけた。孤軍奮闘で九州男児の底力を見せている男が、16年日本選手権に続いて2つ目のG1タイトルをつかみ取る。
別府初のG1が、いよいよ最終日を迎えた。平成最後の年に初めてG1開催を誘致した施行者、関係者は万全の態勢を整え、準備してきたことだろう。スタンドのファンは結構多かった。場内がにぎわいを見せていたから、G1の雰囲気は十分に感じられた。7月にはG2サマーナイトフェスティバルが開催される。最終日も選手には、しっかりアピールする走りを見せてほしい。
別府のほかにもG1を開催したことのない競輪場はたくさんあるのだから、熱意のある場は手を挙げていいと思う。今はネット投票が主流。大都市圏で開催すれば売れる…というご時世ではない。やはりトップクラスの選手の迫力あるレースを生で見られることは、ファンにとっても魅力だろう。
大会前は昨年あたりから見えてきた世代交代の流れがどう加速するかと、期待していた。だが、ここまで3日間を通じていえば、残念ながら「逆行」した気がする。イチ押ししていた清水裕友も2次予選で無理なコース取りで落車するし、昨年の暮れから急上昇の太田竜馬も準決に勝ち上がって一気にステップアップするチャンスだったが、力を出し切れないまま終わった。
山崎賢人にしても南潤にしても間違いなく力はあるのだけど、コンディションなのか組み立ての甘さなのか、もうひとつ壁を乗り越えられない。若手が一気に伸びないのも業界の大きな課題と思うし、彼らの奮起に期待したい。
さて、決勝で私が期待するのは中川だ。彼については、これまでも言われていることだけど、いい時と悪い時がはっきりしている。その表裏の部分で「いい時」の強さを存分に見せつけたのが3日目の準決だ。あれが中川の本来の強さ。彼もS級に上がってしばらくは普通の選手だったが、12年ロンドン五輪、16年のリオ五輪を目指すことでパワーアップして一流の域まで上がってきた。今年の誕生日で40歳になるが、まだまだこれから上がっていける力を秘めていると思っている。
決勝は単騎での戦いとなったが、16年の静岡日本選手権も単騎で見事にG1初優勝を飾っている。ポイントは人の仕掛けを当てにしないこと。自分の力を信じて自分のタイミングで仕掛けるレースができたら、結果はついてくるはずだ。
◆中野浩一(なかの・こういち)1955年(昭30)11月14日、福岡県久留米市生まれ。競輪学校35期生として75年5月デビュー。78年競輪祭でG1初優勝。80年に日本プロスポーツ選手として初の年間獲得賞金1億円を突破。G1優勝11度。85年のKEIRINグランプリ初代王者。77年から86年まで世界選手権スプリント種目で10連覇。92年高松宮記念杯決勝2着を最後に引退。通算成績は1236戦666勝。通算獲得賞金13億2764万677円。06年春に競輪選手出身で初の紫綬褒章受賞。日本自転車競技連盟強化委員長。日刊スポーツ評論家、スポーツコメンテーターとしても活躍。