80年に中野浩一氏(日刊スポーツ評論家)が、日本のプロスポーツ選手として初めて年間賞金1億円を突破してから42年-。脇本雄太が、公営競技史上最高となる年間3億円という偉業に挑む。
今年は史上最高の優勝賞金1億2000万円超。4度目のGP挑戦。「GPは、もちろん賞金が一番高いグレードレースではある。でも、今年1年の集大成が見せられるかどうか、というレース。それによって次の1年が変わってくる」。そう静かに口を開いた。
年間賞金ランクトップとして迎える大一番。今年はG12冠を達成したが、競輪で最高の格式、最高賞金を誇る日本選手権(ダービー)、次に格が高いと言われるオールスター(AS)の2つのG1を制してきた。しかも、ASは98年に本紙評論家の山口幸二氏が達成して以来、24年ぶりとなる無敗V(完全優勝)。当時の制度とは違い、5戦全勝という離れ業だ。
それだけではない。このAS5連勝を含め、今年9月のG2共同通信社杯初日まで、S級の最多連勝記録となる21連勝を樹立。94年、吉岡稔真氏(引退)がマークした18連勝を28年ぶりに更新した。過去のGP覇者が打ち立てた、輝かしい歴史を塗り替える活躍だ。
脚力自慢が集う競輪界にあって「異次元のスピード」と評されている。一瞬で相手を置き去りにする最大スピードは、時速70キロに迫る。以前は、持久力を生かした先行(逃げ)を得意としていた。リオ五輪、そして東京五輪を目指す9年間の脚力強化で、20年世界選手権ケイリンでは銀メダルを獲得。世界に通用するダッシュ力に磨きがかかった。相手に警戒されるため、最近は後方から一気の巻き返しが主戦法にチェンジ。それでも、AS決勝では、最後方から残り150メートルしかない距離ながら、前団をごぼう抜きして優勝をかっさらっている。
21年の東京五輪を最後にナショナルチームの強化指定を外れたが、脚力の衰えは感じない。今年7月、自転車競技の国際大会「ジャパントラックカップ」に出場。すると、パリ五輪を目指す現役ナショナルチームを相手にケイリンで優勝してみせた。約1年の競技ブランクすら、敵ではなかった。思わず「情けない。残り日数も限られているのに(世界に)追いつかない」と、後輩らを叱咤(しった)したほどだ。
GPでの走りに、迷いはない。「勝ちたいから何でもやる、ということではなくいつも通りに自分のレースをするだけ。萎縮したりするレースはしたくない」と真っ向勝負を宣言する。
レース展開はこうだ。スタート後、新山響平率いる北日本勢に前を取られると、そのままの逃げを許す。同じ近畿の1番車の古性優作が前を取ることでもつれを誘うのが近畿にとっては定石だ。単騎3車は中団に入り、2段ロケット態勢の北日本は後ろ攻め。これにより上昇する北日本勢に、単騎3車が分断に出る可能性が高まる。新山が先行する流れに対し、単騎の郡司浩平や、「単調なレースにしない」と宣言した松浦悠士が先に仕掛けて乱しにかかる。番手から新田祐大が先頭に出ても、踏む距離は長くなる。
さあ脇本の出番。短くなった前団を異次元まくりでねじ伏せる。22年12月30日。ダービー、オールスター、そしてGP制覇の3億円伝説を打ち立てる。【山本幸史】
◆29日の脇本雄太 笑顔で会見に臨むなどリラックスムード。公開練習では古性優作を背に、バンクの中段のイエローライン付近で静かに周回を重ねた。「内外線間よりは、少し上を走って感覚を確かめたかった。古性君には付き合わせてしまって、申し訳なかった」。前団をのみ込むイメージをふくらませる。





















