エルサルバドル戦の後半、DF2人を置き去りにするMF久保建英(2019年6月9日撮影)
エルサルバドル戦の後半、DF2人を置き去りにするMF久保建英(2019年6月9日撮影)

サッカー日本代表MF久保建英(18=FC東京)が、9日の国際親善試合エルサルバドル戦(ひとめぼれスタジアム宮城)で待望のA代表デビューを果たした。史上2番目となる18歳5日の年少出場記録。後半22分に出場すると、6分後には相手2選手をかわして「名刺代わり」の左足シュートを放った。

本紙評論家で「秋田塾」塾長の秋田豊氏(48)が、そのシュート場面を振り返り、久保のすごさを解説するとともに今後への期待を寄せた。

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大迫勇から出た右サイドへのパス。縦へ走った久保が受ける瞬間、左前に1人、後ろからもう1人が挟みに来た。守る側としては2人で挟みサイドへと追い込んだわけだから「もらった」と思ったはず。この場面でDFが一番気にするのが2人の間を抜けられること。2番目は、縦に走られてクロスを上げられることだ。

久保は相手の心理状態が分かっていた。「間は抜けられない」と見せかけるため、左足で細かくボールタッチしながら一瞬、縦に走るフリをした。相手に「こいつは2番目の選択をしたな」と見せることで、前にいた選手が縦を切るためのポジショニングを取ろうとした。その一瞬、DF2人の間にスペースができた。久保は迷わず、左足アウトサイドを使い、その間を抜けた。そして左足を振り抜いた。一瞬の駆け引きでシュートチャンスをつくったことを高く評価したい。

2年前から久保のプレーは気にして見てきた。以前の久保なら、間違いなく今回の場面ではボールを持った大迫勇のところに寄っていったはず。足元の技術には自信があったため、自分でボールをもらってから局面を打開しようとする傾向が強かった。皮肉にも、最も得意とするプレーが成長の妨げになった昨季、東京で出番に恵まれなかった。長谷川監督の親心だったはず。この挫折があり、スペースに走り込めるようになり、守備も積極的にこなせるようになり、自然と足元の技術も生きてきた。

あのシュート場面ではちょっとしたミスがあった。2人の間を抜け出し、シュート体勢に持ち込むために左足で1度ボールをコントロールしている。このタッチでやや内側にボールを運んでしまい、ゴールへの角度を狭くした。本来ならもっと外側、中央寄りにボールを置きたかったはず。あのタッチで左足の強振しか選択肢がなくなり、GKは守りやすくなった。理想を言えば、中央寄りにボールを運んで左足で巻いてファーサイドの左上の隅を狙えば、ゴールの確率は高まったのではないだろうか。

30分弱の時間だが、久保は代表レギュラーともイメージを共有できることを証明した。堂安-南野-中島の2列目3人の代役としての可能性は示した。今後は、この一角を崩すには? の疑問にぶつかるはず。現段階で3人と久保の一番の違いは最後のクオリティー。3人がそろった時の質の高さは実証済みで、3人は最後に決めきるためのフィジカルを持っている。

これからは、相手選手の久保へのプレッシャーが高まるはずだ。デビュー当時のメッシは相手に削られて負傷退場、離脱を繰り返した。相手の削る行為に逃げることができなかったからで、今はそれを予測してうまく逃げることができる。久保も同じ目に遭うことが考えられる。逃げる技術と最後の質を高めれば、久保は間違いなく日本の10番を背負う選手に成長するはずだ。(日刊スポーツ評論家)

◆久保デビュー戦VTR 後半22分にMF南野に代わって登場。トップ下に入ると、28分には右サイドからバルセロナFWメッシを想起させる鋭く細かいステップのドリブルで、DF2人をかわして左足で代表初シュート。34分にはペナルティーエリア右から右足でクロスを送り、好機をつくった。37分にMF橋本からの縦パスを左足アウトサイドでボールを浮かせ、FW大迫勇につなげた。38分にはファウルを受けながらも倒れずに2人を突破。ロスタイムにはMF中島のパスをワンタッチで前線の大迫勇につなげ、中島が抜け出す絶好機も演出するなど、随所に高い技術が光った。

エルサルバドル戦の後半、DF2人を置き去りにしてシュートを放つMF久保建英(2019年6月9日撮影)
エルサルバドル戦の後半、DF2人を置き去りにしてシュートを放つMF久保建英(2019年6月9日撮影)