J1アルビレックス新潟のMF伊藤涼太郎(25)は、相手のマークが厳しくなる中でも、さらにその上を行く。Jリーグ公認データ「J STATS」によると、今季の伊藤は味方のシュートに直結した「ラストパス」でリーグ最多の30本。2位が神戸FW大迫勇也の25本で、首位快走の原動力になっている日本を代表するFWの数字を上回る。新潟のチーム総数は90本で、伊藤1人が全体の3分の1を占める。

国内だけでなく、海外クラブからの「マーク」も強まっているようだが、トラップのさじ加減が絶妙で、ファーストタッチで相手のマークを瞬時に外して前を向く。チャージを受けたとしても巧みなボールコントロールで動じない。味方が次のプレーに移りやすい位置に気の利いたパスを通し続ける。

2-1で逆転勝ちした14日の横浜F・マリノス戦では1得点。その他にも前半30分に見せたFW小見への自陣中央からのロングスルーパスは秀逸だった。同本数はリーグ2位の43本で、成功率は53・5%。試合を視察した日本代表の森保監督は「高い技術力を持って創造性も豊かないい選手。チームのために個を生かしている」と評価していた。

7得点はリーグ2位タイ。アシストは開幕戦で記録した2回にとどまっているものの、インターセプト数、こぼれ球奪取数もチーム最多タイで、総走行距離はチーム最長の約138キロに達する。華やかなプレーを見せる一方で、守備でも献身的。お互いに疲れの見えた試合終盤、勝利への執念を見せ、相手ボール保持者に全速力で詰め寄る。

新潟所属時にA代表に選出された選手は過去に5人いるが、今季の伊藤はかつてホームのビッグスワンを沸かせた元日本代表以上のインパクトを残している。

【石川秀和】

◆新潟の日本代表 新潟所属時にA代表に選ばれた選手は過去5人。FW矢野貴章(現J2栃木)が最初で、国際Aマッチ通算19試合2得点、2010年FIFAワールドカップ(W杯)南アフリカ大会にも出場した。DF永田充は2試合に出場。DF酒井高徳(現J2神戸)は新潟在籍時の10年に初選出されたが出場機会はなく、国際Aマッチ通算42試合は全てドイツでプレーしているときに記録した。GK東口順昭(G大阪)とDF松原健(横浜)も新潟在籍時に出場機会はなく、それぞれ現所属チームで代表デビュー。Aマッチ通算9試合1得点のFW川又堅碁は新潟でゴールを量産して当時の日本代表ザッケローニ監督に注目されたが、新潟在籍時に選出はされなかった。