2023年ももう6月です。この時期になると毎年のように移籍話が盛り上がりますが、今年はまだ欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝が残っているせいか、シーズンが終わった感はありません。そんな中、現地の報道ベースにはなりますが、国際サッカー連盟(FIFA)が今年1月の移籍を振り返っていたので、簡単にお伝えします。

今年1月に各クラブが支出した移籍金の総額は15億7000万ドル(約2053億円)となっており、コロナ前に記録した2018年の過去最高額よりも約2億3000万ドル(約300億8000万円)近く上回っているとしました。前年比率で見ると14.4%の増加となっており、コロナ禍で止まっていた時計が再び動き出したような感覚でしょうか。

国別で見ると、イングランドのクラブが最も多く費用をかけており、全体の57.3%にあたる8億9860万ドル(約1175億円)も費やしていたようです。ちなみにですが、2位はフランスで1億3190万ドル(約172億5000万円)となっており、10倍近くの差があることから、イングランド・プレミアリーグの規模がいかに大きいか、というところが実感できます。

移籍金ランキング・支出ベースでは、1位:イングランド8億9860万ドル(約1175億円)、2位:フランス1億3190万ドル(約172億5000万円)、3位:ドイツ8580万ドル(約112億3000万円)、4位:ポルトガル4760万ドル(約62億3000万円)、5位:スペイン4420万ドル(約57億8000万円)となっています。逆に、収入ベースのランキングとしては1位:フランス2億1600万ドル(約272億5000万円)、2位:ポルトガル1億9400万ドル(約253億7000万円)、3位:オランダ1億1150万ドル(約145億9000万円)、4位:ブラジル9280万ドル(約121億4000万円)、5位:アルゼンチン6820万ドル(約89億2000万円)となっていました。

当然ではありますが、こうした移籍ビジネス市場は各クラブの売り上げと連動します。売上があっての利益創出ですから、売上なくして大きな金額の移籍は成り立ちません。約15年前、2008/09シーズンにおけるクラブ収入上位10チームを見てみると、レアル・マドリードの4億ユーロに始まり、バルセロナ、マンチェスターU、バイエルンの順でトップ10にはイングランド4チーム、イタリア3チーム、スペイン2のドイツが1といった具合で、上位10チームの総計としては約27億ユーロとなっておりました。

一方、2021/22シーズンはトップがマンチェスターCで約7.3億ユーロ。レアル、リバプールと続くラインアップでイングランドは6チーム、スペイン2は変わらずでフランスが1チーム。ドイツが1チームでイタリアクラブはゼロという結果に。総計としては63億2000万ユーロの売り上げを記録しており、単純計算で10年でその市場規模は2.3倍に膨れ上がった結果になっております。売り上げに対してのコスト管理が厳しくなりつつある中、中東や中国市場から資金流入もありますから、これも一つ時代の流れなのかもしれません。

とはいっても、先日日本でもWOWOWがリーガの中継を今季で終了することを発表。さらにワールドカップ女子の放映権が主要5カ国で未だ売り切れていない現状にあることが発覚するなど、フットボール・バブルに限界が来ている感はあります。移籍においてもフリーでの移籍が増えている報道もあり、余計にコストをかけずに済むのであれば当然そうしたいという目論見はあります。

大きくなりすぎた感があるフットボールビジネス。ここからどのように発展していくのでしょうか。放映権ビジネスが発展した結果、若年層は90分フルマッチのゲームを目にすることが極端に少なくなっているなど、問題も出てきております。

今後のフットボールビジネスが持続可能なものなのか、注目していきたいところです。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)