クラブW杯はマンチェスターCの圧勝という形で幕を閉じました。ペップ・グアルディオラ監督がこのあとどうするのかに注目が集まっており、噂ではスペイン代表を率いるのではないかということも。さすがにマンUがペップを取りに行くことは考えにくいですが、決断に注目です。

そのマンUに動きがありました。株式を公開しているのですが、1株あたり20ドルを少し下回る19ドル台で推移していたものが、現地時間26日の朝、NY証券取引所が開いた瞬間に突然20ドル台後半まで急騰。21ドルに達するかという動きを見せました。何が起こったのか調べてみると、BBCの速報で“マンチェスターUの取締役会が『INEOS』を率いるジム・ラトクリフ卿にサッカー部門の管理を委任することになる“とニュースが流れたものでした。以前にもレポートしましたが、英国の資産家でもあるジム・ラトクリフ氏が、カタールやヘッジファンドなどによる競合を制してチームの株式取得を完了したということでした。ラトクリフ氏は、自身が会長を務める英国の化学メーカーである「イネオス・グループ・ホールディングス」を通してマンUの25%株式に対して、1株当たり33ドルを支払うことになるそうです。全体で見るとマンUを約54億ドル(約7650億円)と評価するものになるそうです。当初メディアに出ていた60億ドルには届きませんでしたがファンから好かれていなかったグレイザー一家から一部剥がしたことになります。これを好材料としたことが株価上昇につながりました。

ラトクリフ氏は今年入って、マンUのクラブ経営権を巡ってカタール元首相三男のシェイク・ジャシム・ハマド・サー二氏の提案と競合状態にありました。クラブを過剰な価格で買うことはないと明言していたカタール勢は、50億ポンド(約9000億円)の提案をしておりましたが今年の10月にこれを撤回。報道によるとこの案件でカタール勢を担当した投資銀行レイングループとの関係が悪化していたとも報じられております。同時に昨年ウクライナ・ロシアの紛争を機にチェルシーの買収に乗り出しておりましたが、これが失敗。方向転換から今回のマンU株取得に至ったとされております。ラトクリフ氏はイネオスをベースにフランスリーグ・アンのOGCニースや、以前チーム・スカイとして知られていたサイクリング・グループを所有しているほか、F1のメルセデスAMGペトロナスの株式も保持するなどスポーツ業界に大きなネットワークを作り上げつつあります。このマンU株式取得の第1歩が先日レポートした流行りのマルチオーナーシップによるグループ化に結びつくのか、それとも単体で勝負していくのか、注目せざるをえません。

マルチオーナーシップの部分になりますが、スペインでは当初降格候補であったジローナが活躍を見せています。ここまでの前半戦でレアル、バルサなどを抑えて1位に躍り出るという躍進ぶり。チームのメンバー構成を見ても国際色豊かな感じではなく、スペイン人を中心とした、いわゆるTHE SPAINの地方チームのようにしか見えません。しかしこのチームは実はシティグループの傘下にあり、豊富な資金力を保持するどころか、選手のソースも持ち合わせているチームでもあります。シティグループの傘下に入ったのが2017年6月。現シティ監督のペップ・グアルディオラ監督の実弟でもあるペレ・グアルディオラ氏が持つメディア・ベース社と共に共同経営者になりました。この効力がいつ発揮されるのかと地元では長きにわたってささやかれてきたものの、今季は一気に解放しています。後半戦がどのようになるのか注目ですが、ここで活躍した選手がどれだけシティに引き抜かれるのか、このあたりも見ものです。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)