1次リーグからハイテンションで走り続けてきた大会は、決勝トーナメントに入ってさらにヒートアップしている。各国が激しい戦いを続ける中、史上最高のサッカー選手のペレさん(82)も病と闘っている。

58年スウェーデン、62年チリ、70年メキシコ大会でブラジルを3回のFIFAワールドカップ(W杯)優勝に導いた「王様」は、昨年9月に結腸がんの手術を受けた後、入退院を繰り返していた。11月30日に再入院し、今月3日には化学療法を中止して「緩和ケア」に入ったと報じられた。

本人はインスタグラムで「いつも通りの治療を受けている」と強調。「落ち着いて、前向きな気持ちでいてほしい」と心配する声に応えた。家族も病院も容体悪化は否定したが、世界の目は熱戦続きの大会とともに王様にも向けられる。

カタールでも「ミスターW杯」の病状が話題にあがる。ドーハのビルには大きな顔写真とともに回復を祈るメッセージ。4日の2ゴールでフランスを8強に導いた「新時代のペレ」エムバペも、3日のツイッターに「キング(ペレ)に祈りを」と投稿した。

現役引退後もW杯との縁は切れなかった。FIFAとの関係が悪化した時期もあったが、その後はコメンテーターなど外から大会に参加。毎回、注目されるのは、その優勝国予想だ。

94年米国大会で「優勝」としたコロンビアが1次リーグで敗退したのが始まりだった。98年はスペイン、02年はアルゼンチンとフランスを推したが、すべて1次リーグ敗退。06年のブラジル、10年のメキシコも外れ、「ペレの呪い」という都市伝説まで生まれた。

14年には開催国ブラジルに加えドイツ、スペインまで候補に。「3つも挙げれば」と突っ込まれたが、ようやくドイツで的中した。予想が注目されたのも、やはり「ペレ=W杯」だからだ。毎回話題を振りまくペレさんが闘病中なのは、やはりW杯にとって寂しい。

W杯には説明のつかないジンクスが存在する。「ペレ予想」と同じように毎回言われたのが「マラドーナの呪い」。同氏がスタンドに姿を見せるとメッシが萎縮し、アルゼンチンが負けるというのだ。ただ同氏は一昨年に60歳で死去。大会の華でもあった姿を見ることはできない。今度は、メッシたちが「神の子」にささげる優勝を果たす番だ。

残るは「ミック」。ローリングストーンズのミック・ジャガーは大のサッカー好きでイングランドファンだが、応援するチームが負けるというジンクス。今大会は姿も現さず、発言もしていないが、いつ「呪い」が発動するのか。ペレさんの回復を祈りながら、テレビ中継のスタンド映像からも目が離せない。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)