今月の親善試合ブラジル戦とベルギー戦、日本にとっては大きな意味があり、チャレンジになる。一方相手にとってはきっと「アジアのチームと1回対戦を経験しておく」という意味だけだろう。興行的、ビジネス的でもある。そんな中、日本的にいい試合をすればいい。ただ、6人交代では参考にならない。90分勝負の訓練、W杯への準備にはならないよ。

 ところで、10月の親善試合ニュージーランド戦とハイチ戦、テーマは何だったのか? みんな「サバイバル」と言っていたけど、違う意味になった。ひどい内容の試合で、出なかった選手、呼ばれなかった選手が得をした。

 田嶋幸三(日本サッカー協会)会長がハイチと3-3で引き分けた後、「とにかく負けなくてよかった」と言ったそうだ。FIFAランキング、つまりW杯の組み合わせ抽選会に影響するという意味らしい。これは会長の立場で言うことじゃない。裏返したら、それで弱い国を選んだの? 強化じゃなくてランキングのために、日本が勝てる相手を呼んできたの? そういう発言になっちゃう。

 ハリルホジッチ監督が9月28日の選手発表の場で、ボール保持率を重視する日本の傾向に物申した。日本がずっとやっていたサッカーを変えようとした。デュエル(決闘=ボールの奪い合い)で勝つことを求めている。でも皮肉なことにハイチ戦は2-3で迎えた終盤に、ハリル監督がやってほしくないサッカーで同点に追いついちゃった。球を回して回して、チャンスが生まれた。

 例えば10月のU-17W杯(インド)で日本の選手に「デュエル、デュエル」と命じたら、みんな壊れて帰ってきたよ。相手は大きくて強い選手ばかりだもの。だから全然違う、体格に合ったサッカーで戦った。なでしこジャパンもそう。大柄なドイツや米国に勝つためにパスサッカーをした。接触を減らすよう、ダイレクトで回して、相手の強みを消した。

 ハリル監督は前回W杯ブラジル大会でアルジェリアを率いてベスト16。優勝したドイツを相手に延長戦まで持ち込んだ。北アフリカのアルジェリア人は鍛えなくてもすごい体格をしている。大きいし、戦争みたいにガツンガツン当たっていく。そういうサッカーを日本にもしてほしいというのは「誤解」だ。そもそもボール保持率の話の時に引き合いに出したのが、(欧州CL)パリサンジェルマン-Bミュンヘン戦というのがおかしい。(日刊スポーツ評論家)