“スロースターター”G大阪が今季も序盤で苦しんでいる。アジア・チャンピオンズリーグは早くも1次リーグで敗退し、J1も8位に甘んじている。特に今季から使用する新本拠地の市立吹田スタジアムでは、公式戦7戦を終えて1勝1分け5敗とかなり苦戦している。

 新しい“家”。約4万人の観衆によって醸し出される欧州のスタジアムのような臨場感は圧倒的だ。ゴール裏のサポーターの応援は相手の脅威になっていることも間違いない。昨季は元本拠地・万博でのJ1が17試合でわずか1敗。ホームに強いガンバだっただけに、やっぱり新本拠地でも勝利が見たいという思いは強い。

 選手は新しい“家”にまだ慣れていない。よくささやかれている要因の1つが「芝生」だ。ガンバのパスサッカーを生かすため、万博の芝生は20ミリにカットされていた。新スタジアムに移った当初は30ミリで、現在は23ミリ。芝を発育する上で、これが本当に限界ギリギリの長さで、長谷川監督は「今シーズンはもうこれ以上カットして、と注文することはできない」という。

 30ミリにカットされていた理由の1つは光合成にある。新本拠地は全席屋根でカバーされている。逆に言えば、その分、太陽光が入りにくい。芝生の育成を考慮して、南側の屋根(アウェーゴール裏側)はガラスになっているが、ガラスを通すことによって日光の照射量は万博に比べて10分の1になってしまうという。

 新本拠地の芝生を植え始めたのは、昨年の夏過ぎ。冬至にかけて太陽の高さは低く、日射時間が短くなっていき、南側の芝生の一部は2月末の開幕まで1度も太陽光を浴びなかった。建設側もできるだけ太陽光が入るように設計を工夫したそうだが、それでも万博と比べると劣ってしまう。

 欧州式の臨場感あるスタジアムながら、植える芝も、気候も日本。欧州では、日射量が少なく涼しい気候を好む冬芝を使用している。しかし、日本では暖かすぎて冬芝を通年使用できない。夏に枯れてしまうのだ。夏には夏芝を、冬には冬芝を使うスタジアムがほとんどになっている。

 厳しい環境の中、新スタジアムのグラウンドキーパーは努力を重ねている。LEDライトを当てて芝の生育を早める実験を実施中。「欧州では光を当てて芝を育てる機械を使っているでしょ?」という意見があるかもしれないが、そもそも日本では陸上競技場が多く、そんな機械は不要で、開発が進んでいなかった。それでも、輸入するとなると推定で数千万~1億円という膨大な費用がかかる。輸入するより、日本で開発したほうが効率も良い。

 無論、長谷川監督も試合前の散水量を調整したり、選手も慣れるようスタジアムで練習を行ったり工夫はしている。次節29日はリーグ2位につける川崎F戦で、ホーム試合は公式戦8戦目。ゴールデンウイークの始まりに勝利の歌を響かせることができるか。G大阪に第1ステージ最大のヤマ場が待ち受ける。【小杉舞】


 ◆小杉舞(こすぎ・まい)1990年(平2)6月21日、奈良市生まれ。大阪教育大を経て14年、大阪本社に入社。1年目の同年11月からサッカー担当。今季の担当はG大阪など西日本クラブ。市立吹田スタジアムでは試合中、隣の人と会話できないほど応援が響き渡ります。