今季の川崎Fの守備を最後方から支えているのが、韓国代表GKチョン・ソンリョン(31)だ。クラブ創設20周年の年で、初めて同クラブがアジア枠で獲得した選手でもある。今季、ソンリョンの好セーブで勝ち点を手にした試合が少なくとも3試合ある。

 4月2日の第5節鹿島戦では、16本のシュートを浴びながらも猛攻に耐え、引き分けで勝ち点1。第6節鳥栖戦では、FW岡田との1対1の大ピンチを防ぎ、ロスタイムの大久保の決勝弾で勝ち点3を手にした。5月21日の第13節新潟戦も、FW指宿との1対1でビッグセーブ。結果はスコアレスドローだったが、負けていてもおかしくない展開だった。ソンリョンのセーブで勝ち点5を上積みしたといっても過言ではない。

 15年4月末まで担当していた磐田では、ポーランド人GKカミンスキーが活躍していた。磐田の強化担当者が当時こう話していたのを思い出す。「日本人のFW、MFの選手は海外の主要リーグで活躍しているが、GKではほとんどいない。GKは日本人と外国人の身体能力の差が出るポジション」。その言葉通り、カミンスキーの数々の好セーブが当時J2だった磐田をJ1に押し上げた。過去のJリーグを見ても、浦和が14年にGK西川周作(29)、G大阪が東口順昭(30)を獲得し、両チームの快進撃につながった。GKがいかに重要であることを物語っている。

 今季の川崎Fは、1試合平均失点が0・93(昨季は1・41)。無失点試合も既に、昨季と同じ6試合となった。DF奈良竜樹(22)エドゥアルド(23)の奮闘と同時に、ソンリョンの貢献も大きい。

 ソンリョンはこのほど、韓国代表として欧州遠征に参加し、欧州選手権に出場するスペイン、チェコと対戦した。ソンリョンはチェコ戦に先発出場。ビッグセーブを連発し2-1で勝利した。相手GKはチェフ(34=アーセナル)だった。「韓国はチェコに15年ぶりに勝ったんです。試合に集中していたので、試合後にやっとチェフ選手の顔を見られました。欧州に行って試合をしたことが(韓国代表)チームにとって大きな経験だった」。チェコ戦の勢いをそのまま11日の横浜戦につなげ、川崎Fのゴールマウスを守ってくれるだろう。【岩田千代巳】

 

 ◆岩田千代巳(いわた・ちよみ) 1972年(昭47)、名古屋市生まれ。菊里高、お茶の水女子大を経て95年、入社。主に文化社会部で芸能、音楽を担当。11年11月、静岡支局に異動し初のスポーツの現場に。13年1月から(当時)J1磐田を担当。15年5月、スポーツ部に異動し主に川崎F担当。