今月上旬にえひめ国体で少年男子サッカーを取材しました。私が担当した静岡県選抜は準々決勝で神奈川県選抜に敗れ、ベスト8で敗退。2011年以来6年ぶりの優勝はまたしても来年以降に持ち越しとなりました。静岡は国体で過去最多23度の優勝を誇っていますが、近年は低迷が続き「サッカー王国」と呼ばれたかつての強さはありません。

 今回招集された選手は昨年の中学年代で全国3冠を達成した清水ユースが中心。現在御殿場を拠点に活動しているJFAアカデミー福島からも年代別代表経験者が数人選ばれていました。優勝を狙い「本気」のメンバー構成で臨みながらも、結果は8強止まり。0-2で敗れた神奈川との準々決勝はスコア以上の完敗でした。

 私自身、静岡で高校3年までサッカーをしていました。県選抜に選ばれたことはありませんが、強かった時代の「静岡サッカー」を近くで見てきました。では、なぜ勝てなくなってしまったのか。昔と今の選手の違いとは-。それは相手に脅威となる「こわさ」がなくなってきていることだと思います。

 相手を崩すパスサッカーが「静岡らしさ」とよく言われますが、私はそうとは思いません。強かった時代の静岡は選手1人1人が「勝つサッカー」に徹していました。

 相手に走り勝つ。球際で競り勝つ。相手のより1歩先に足を出す。試合中は疲れた表情を一切見せない。極論を言えば、指示をする声量でも勝つ。個々の勝負で絶対に負けないという負けん気を出すことが「こわさ」となり、試合の勝敗にもつながっていたと思います。

 国体で静岡県選抜を指揮した加藤慎一郎監督(49=清水ユースヘッドコーチ)も言っていました。「日々の練習でもっと選手同士が切磋琢磨(せっさたくま)していかなければいけない」。まさに、その通りだと思います。目の前の相手に負けないという意識を強く持って練習に励むことが「サッカー王国復活」への近道だと思います。

 日本代表でも同じことが言えます。ボールを器用に扱う「うまい」選手はたくさんいますが、1人で状況を変えられる「こわい」選手がいません。世界に目を向ければ、メッシやネイマール、クリスティアノ・ロナルドなど…。1人で試合を決められる選手が多くいます。

 世界と対等に戦うためには、スペシャルな選手を育てることも大事なのではないかと感じました。静岡に限らず、日本サッカーが抱えている問題。育成年代指導での抜本的な改革が求められています。【神谷亮磨】


 ◆神谷亮磨(かみや・りょうま)1985年(昭60)8月28日、静岡市清水区生まれ。幼稚園からサッカーを始め、高校は東海大静岡翔洋(旧東海大一)でプレー。08年入社。担当は11、12年に磐田、13、14年にアマチュアサッカー、15年から清水。現在はJ3沼津などを担当。