ジュビロ磐田MF中村俊輔(39)の、コメントが印象的だった。今月7日にエコパで行われた清水エスパルスとの「静岡ダービー」。結果は0-0の引き分けに終わったが、背番号「10」は得意のセットプレーから好機を何度も演出。前半42分には、CKを直接狙うなど3万598人の観衆を沸かせた。

 試合後、報道陣からこのCKについて問われた中村は、自身の“CK論”を語った。「1試合平均でCKは4、5本ある。その中で、ピンポイントで狙っていく時と、ちょっと守備を動かしたい時がある」。

 前半5分に得たこの試合最初のCKでは、ニアサイドに立つ清水FWクリスラン(26)の後方に落とすようなボールを蹴っている。結果は誰にも合わず逆サイドに流れたが、中村は「ほんの1歩2歩だけど、ストーン(壁役)の選手だったり、守備が引き気味になったりする」と、直接狙ったCKも含めた狙いを明かした。

 これで守備を動かすと、後半2分のCKではFW川又堅碁(28)の頭にピタリと合わせた。同11分にはCKでビッグチャンスを演出し、同18分にもショートCKからDF高橋祥平(26)の頭にピンポイントクロスを供給。いずれも得点には結びつかなかったが、前半のCKを布石に確実にゴールに迫った。

 中村は最後に「この試合だけじゃない。(今後の対戦相手が)スカウティングのビデオを撮ったりもしている。こういう小さな積み重ねが結果につながったり、味方の可能性を広げたりする」と結んだ。

 FKの名手として世界に認められた中村の左足。そのキックの正確性はもちろんだが、1本のCKにも「1試合」、さらには「シーズン」を見据えた駆け引きが込められいる。そんな極意を聞けた貴重な時間だった。

 ◆前田和哉(まえだ・かずや)1982年(昭57)8月16日、静岡市生まれ。小2からサッカーを始め、高校は清水商(現清水桜が丘)に所属。10年入社。一昨年までは高校サッカーを取材し、昨年から磐田担当。