可能性は見いだされるものなのか。今季、セレッソ大阪に新加入の奧埜博亮(ひろあき、30)。ケガ人続出の前線に抜てき、最近2試合連続ゴールの今季5得点でストライカーの地位を固めつつある。

ロティーナ監督(62)は「FWにケガ人が続き、最適なのが奧埜だった。ゴールを決められる特徴がある」と素材を見抜いた。前節横浜F・マリノス戦は2ゴールで勝利に導いた。「与えられた」というポジションだが、結果で正解を導き出している。

12年から在籍したベガルタ仙台では守備的位置だった。奧埜も「自分の持ち味はボランチ」という。チーム事情からの抜てきを受け「やるしかないと思った」。プロ入り前までは攻撃的ポジションでプレーした。その記憶を呼び起こして奮闘し、結果も伴ってきた。

決意の移籍から、ポジションにこだわらない覚悟があった。「技術の高い選手がそろっている。試合に出られないことも想定しての移籍。試合に絡めるなら、どのポジションでもやってやろうと思った」。

ハングリーさが、C大阪のチーム状況にはまった。FWでも指揮官からは「守備の指示が多い。やりがいと難しさを感じる」と言う。ただ、ゴールだけを狙う今までのFWの枠にとらわれない。ゴールを決めて、守備にも貢献する。新たなFW像に、奧埜は挑戦する。

個性派集団、C大阪でのやりがいも感じる。「みんなが技術が高い。お互いに刺激し合って幅が広がる。これからチームが強くなる可能性を感じる」。

C大阪は現在リーグ戦7位。奧埜は「理想はボールを握って、(勝つ)結果を出すこと」と言う。配置転換からのブレーク。移籍1年目の奧埜は完全に立ち位置を見極めた。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆実藤健一(さねふじ・けんいち) 1968年(昭43)3月6日、長崎市生まれ。若貴ブームの相撲、ボクシングでは辰吉、徳山、亀田3兄弟らを担当し、星野阪神でも03年優勝を担当。その後いろいろをへてスポーツ記者復帰。九州、長崎愛が異常に強い。