足元の技術とハードワークを武器に全国選手権で2年連続4強入りを果たしている新潟・帝京長岡高サッカー部の谷口哲朗総監督(48)の著書「ボールを大事に 心美しく勝つ 帝京長岡スタイル」(竹書房)が、12月20日から全国の書店で発売されている。00年の監督就任(16年から総監督)から全国選手権9度、全国高校総体5度の出場に導いた闘将がチームの代名詞となっている「パスサッカー」を志したキッカケや下部組織的存在である長岡JY(ジュニアユース)FCの立ち上げ、選手が育つ環境の作り方の舞台裏などを明かしている。

同部は現在、県内外から150人を越す選手が集まる大所帯となっている。だが指導1年目は選手と激突を繰り返し、部員が50人から11人に減ってしまったこともあった。ピッチを広げるために桜の木を切ったら同僚からこっぴどくしかられたこと。母校である帝京高(東京)の恩師・古沼貞雄氏(82)からは「優勝した世代」(91年度全国選手権優勝)ではなく、「合宿から逃げちゃった世代」と呼ばれていることなど、ここまでの成果だけでなく失敗談も踏まえ、ありのままを伝えている。

今回、この著書をこのコラムに掲載してもいいかを谷口総監督に確認した際、「いつもありがとうございます。お恥ずかしい限りですが、お好きに使ってください。どうぞお願い致します」と快く承諾していただいた。著書の中でも「感謝」というワードが多く出てくるが、こんな私にさえも謙虚で丁寧に接してくれる。ここ2年、取材で同部にお世話になるが、選手たちも1人1人が立ち止まり、気持ちいいあいさつをしてくれる。私は「こういうチームに勝って欲しいし、勝つべきだ」と心を震わされている。

開幕(12月28日)が迫った全国選手権で、帝京長岡が狙うのは新潟県勢初の全国制覇。31日の2回戦からの登場で、対戦相手は強豪・神村学園(鹿児島)に決まっている。今度こそ豪雪地・長岡に優勝旗を持ち帰るため、谷口総監督と教え子である古沢徹監督(36)が選手たちとどんなサッカーを展開するのか。今から初戦が楽しみだ。【小林忠】


◆竹書房の担当・柴田洋史さん(50) 選手権の開幕前に発売になったのはたまたま。もともと帝京長岡高のサッカーが好きで、よく見ていた。帝京長岡、中央学院高(千葉)、京都橘高といった技巧派集団の3校が集まっていた練習試合の会場にお邪魔した際に、谷口総監督に書籍化のお話をさせていただいた。興味深いお話ばかりで、読み応えたっぷりの本に仕上がったと思います。


◆谷口哲朗(たにぐち・てつろう)1973年(昭48)生まれ、大阪府出身。中学卒業と同時に親元を離れて帝京高(東京)に進学。3年時に全国選手権優勝を経験。大阪体育大卒業後の96年に帝京長岡高に赴任し、コーチとして指導者のキャリアをスタート。00年に監督に就任し、同年に全国選手権初出場。16年からは総監督を務める。3人兄弟の父でもあり、夫人は今年完成したサッカー部寮で寮母を務める。

教え子でもある帝京長岡・古沢監督(右)と話し込む谷口総監督(中央)
教え子でもある帝京長岡・古沢監督(右)と話し込む谷口総監督(中央)