星稜から学び、星稜を倒す。東京勢15大会ぶりの国立を狙う修徳(東京A)は、今日5日に星稜(石川)との準々決勝に臨む。10番のMF田上真伍(3年)は星稜出身の元大リーガー・松井秀喜氏(39)の著書「不動心」を読破して、ここまで2戦連発と波に乗る。勝てば同校初の国立。そのカギは相手校が生んだスーパースターから学んだ、ぶれないハートになる。

 修徳MF田上が「不動心」を胸に刻んだ。国立切符をかけて、前回4強の星稜と対戦。田上は修徳グラウンドで約1時間半の練習を終えると「少し体を動かしたら体が軽くなりました。疲れはそんなに感じない。いつも通り戦いたい」と、気持ちにぶれはない。2回戦から登場し2戦連続ゴール中の攻撃の核。同校初の8強入りに導いた裏には、1冊のバイブルがあった。

 きっかけは昨年11月に負った右足甲骨折。全治3週間の診断の直後に岩本監督から本を手渡された。元大リーガー・松井氏の「不動心」。これを1週間、リハビリの合間に読んで2回読破。中でも「人間ですからイライラするのは仕方がない。態度や口に出してしまうと、気持ちが乱れ、バッティングが乱れ、自分が苦しむことになる」の言葉が響いた。試合中、相手DFのマークにイライラして気持ちを自制できない自分と重ね合わせたからだ。

 相手や環境を気にすることなく、心を乱さず冷静に戦う。高校生にとって決して簡単ではなく、パフォーマンスを左右する大きな要素。初戦綾羽戦の直接FKの場面、その言葉を思い出した。「マンマークをつけられて、激しい当たりもされていた。今までなら冷静にFKを蹴られなかったと思う」。壁とGKの位置を見極め左に決めた。この決勝点が修徳の大きな1歩になった。

 くしくも松井氏の母校・星稜が次の相手。「不思議な縁。だけど僕らも勝って国立に立ちたいんで」と譲るつもりはない。【栗田成芳】

 ◆田上真伍(たがみ・しんご)1995年(平7)5月23日、東京・板橋区生まれ。小学1年からフナトアミーゴでサッカーを始め、中学は東京U-15でプレー。進学した修徳では2年生だった前回大会に途中出場。今大会は10番を背負い、2戦2得点。家族は両親、姉。175センチ、59キロ。血液型B。