【ドーハ(カタール)=6日】悲劇から歓喜の地へ変えてみせる!

 ザックジャパン初の公式大会となるアジア杯が7日、開幕する。日本代表は3日連続で「ドーハの悲劇」の会場となったアルアハリ・スタジアムで練習。MF香川真司(21=ドルトムント)は「カズ魂」を胸に、アジア王者奪回を宣言した。ドーハは93年、翌年のW杯米国大会アジア最終予選で、日本が後半ロスタイムにイラクに同点ゴールを浴びてW杯初出場を逃した因縁の地。当時のエースFWカズ(三浦知良)を尊敬する香川が、18年前のリベンジを誓った。

 18年の時を超え、香川は因縁の地を踏みしめていた。気温22度のアルアハリ・スタジアム。カタール国旗がなびく風を心地よさそうに受けながら、長袖の背番号「10」は新調したオレンジのスパイクで軽快に走った。この場所が何を意味するのかは知っている。子どものころから憧れるのはカズ。ここはキングにとっても日本にとっても、忘れられない悲劇の舞台だ。

 香川

 ここに来ると、やっぱりカズさんの分まで、という気持ちになりますよね。コンディションも上がってきたし、環境や気候にも慣れてきました。

 93年10月、日本は勝てばW杯初出場が決まるイラク戦で、後半ロスタイムに同点を許した。悲願を逃し、同地での戦いは「ドーハの悲劇」として語り継がれる。当時4歳の香川は「中学くらいに初めて聞きました」。当時、日本サッカー界を引っ張っていたのが、エースのカズだった。

 香川は物心ついたころから「すべて格好良かった」とカズに夢中だった。C大阪だった08年4月のJ2リーグ戦で、横浜FCのカズと初対面。ハーフタイムにユニホームをプレゼントされ「ユニホームからもオーラが出てる」と感激した。直後から自室に飾った宝物は、ドイツに渡っても部屋に掲げる。ユニホームに向かい「世界で通用する選手になりますように」と手を合わせる儀式は、ブンデスでの飛躍につながった。

 昨秋には、関係者を通じカズから「今のプレースタイルでいい。いずれ壁は出てくるだろうけど、今の気持ちでサッカーを楽しんで」とエールを送られた。

 香川

 人生って、いろんなことにチャレンジすることだと思う。壁を乗り越えれば、また強くなれますから。アジアは引いてくる相手が多いと思うので、粘り強く集中して90分間やることが大事。優勝するしかありませんから。

 92年のアジア杯、日本を初優勝に導いたカズはMVPに選ばれた。そのカズがW杯を逃したのは、ドーハがきっかけ。香川も昨年のW杯南ア大会でメンバー入りを逃した。この日の練習前、ザッケローニ監督には「ポジションに関係なく、このドーハで結果を出そう」とゲキを飛ばされた香川。心の支えになったカズには、ドーハで喜ぶ姿を贈り届けることが恩返しになる。【近間康隆】