5人目の“神”が、ハリルジャパンに勝利をもたらす。13日のW杯アジア最終予選イラク戦(テヘラン)に向かう日本代表は5日、前日までの海外組の合宿に国内組11人が合流して都内で調整。初招集のDF宇賀神友弥(29=浦和レッズ)は年代別の代表経験もない苦労人で、左サイドバックとして招集された。DF長友佑都らと競争し、まずは7日の国際親善試合シリア戦(味スタ)でAマッチ初出場を目指す。

 公開された練習冒頭で宇賀神は笑顔を見せながら同じ浦和のDF遠藤らとランニングした。シリア戦に出場すれば29歳2カ月15日で、93年のJリーグ創設後ではフィールドプレーヤー6番目の年長デビューとなる。かつて浦和に所属した後輩のFW原口に「ここまで上り詰めるとはな」といじられた宇賀神は「(原口)元気は代表では大先輩なので」と冗談っぽく笑った。

 過去に日本代表に選出され、名前に「神」がつく選手は4人。最近では02年日韓W杯に出場したMF明神智和(現長野)。5人の“神”の中でも、29歳での初選出は最も遅咲き。メンバーの半分以上と初顔合わせのオールドルーキーは「年齢的にも間違いなくラストチャンス。ガンガンいきたい」と目を輝かせた。

 はい上がるサッカー道だった。中学、高校と浦和の下部組織に所属もトップに昇格できなかった。進んだ流通経大では4軍スタートの屈辱も経験した。オファーを勝ち取って10年に浦和に戻った際もゼロからのスタート。DF槙野は「宇賀神と聞いて、正直顔は分からなかった」と明かす。それでも宇賀神は物おじせず、同じ左サイドの槙野にパスの回転数まで要求した。大学時代に培ったスタミナでとにかく走り、浦和では中盤の左サイドとしてチームの信頼を勝ち取った。

 長所は反骨心。「逆境から始まる方が向いているかも」と、いつも謙虚な笑顔に負けん気を隠す。一般的に食べ物の神様ともいわれる宇賀神の姓を持つ左サイドバックは「日本の最高の選手が集まるチームでどれだけ周りを生かせるか」と挑戦を楽しみにした。海外組の長友をも“食って”初出場を狙う。【岡崎悠利】

 ◆宇賀神 古来は人間に福をもたらすと考えられる神たちの総称。古事記にも登場している。「宇賀」は食物を指し、転じて食べ物の神ともいわれる。日本で信仰された仏教の神。神奈川・鎌倉市の宇賀福神社では、宇賀神を祭っている。名前や名字に特化したアプリなどを手掛けるリクルーティングスタジオ社のアプリ「名字由来net」によると宇賀神姓は全国に約6000人で、栃木県に多い。

 ◆宇賀神友弥(うがじん・ともや)1988年(昭63)3月23日、埼玉県戸田市生まれ。ポジションは中盤の左サイドやサイドバック。戸田FC-浦和ジュニアユース-同ユース-流通経大を経て、10年浦和入り。同年3月の鹿島戦でJデビュー。183試合12得点。172センチ、71キロ。