G大阪ユースに所属した高校2年の時、学校に遅刻したり、実家のドアを殴って穴を開けるなど私生活で荒れた。やけになってサッカーをやめようとした時、J2横浜FCでプレーしていた兄正昭さん(29=現JFL・FC大阪)から1通のメールが届いた。「サッカーやめるなよ」。プロになっていた正昭さんは「弟には未来があると分かっていた。だから諦めて欲しくなかった」。

 同じころ、いつも「サッカーを人一倍頑張れ」と応援してくれていた母亜紀子さん(50)が大病を患った。母から電話で病気を告げられ、目が覚めた。「迷惑掛けすぎたと思ったし、自分が早くプロになって恩返ししたい」。家族の思いに応えるため、プロで、世界で、羽ばたくと決めた。

 自らのゴールで開いたW杯への扉。シャイな性格だが「客観的に見たら自分は持ってる人やなと思う。代表で活躍することで今まで育ててくれた人たちはうれしいと思う」。セットプレーのキッカーも任され信頼を勝ち取った。ロシアへ続く道。ヒーローになった井手口が先頭に立ち進んでいく。【小杉舞】

 ◆井手口陽介(いでぐち・ようすけ)1996年(平8)8月23日、福岡市生まれ。G大阪ジュニアユースから同ユース昇格。高校2年時の14年3月にトップ昇格。15年にJ1デビューし通算50試合7得点。国際Aマッチ通算3試合1得点。15年末に同じ中学で同学年だった夏海夫人と結婚し、16年6月に長女愛乃(ひなの)ちゃん誕生。171センチ、71キロ。