日本のA代表とU-21代表の森保一兼任監督(50)が12日、異例の謝罪行脚に出た。初陣コスタリカ戦の3-0快勝から一夜明け、大阪市内を出発。A代表FW杉本健勇(セレッソ大阪)が札幌合宿中に、U-21代表FW前田大然(松本山雅FC)がジャカルタ・アジア大会の最中に負傷したことを説明するため、両クラブに自ら足を運び直接謝罪した。これ以上ない誠意を示したが、多忙な兼務の中で、大丈夫?

ようやくのオフでも、森保監督は真っすぐ自宅へ帰らなかった。アジア大会に出るため8月11日に広島を離れてから33日目。完勝したコスタリカ戦の余韻もそこそこに、大阪市内のホテルからタクシーに乗り込んだ。向かった先はC大阪の練習場。「代表に貸していただいた選手を負傷させてしまったので」。新大阪駅から広島駅まで新幹線で1時間20分なのに、1日がかりの謝罪行脚へ出発した。

初の兼任活動中に2人が負傷していた。まずU-21代表の前田。準優勝したアジア大会の準決勝UAE戦(先月29日)で右前脛腓靱帯(けいひじんたい)と右前距腓靱帯を損傷し、全治5~6週間と診断されていた。続くA代表の札幌合宿中(今月7日)に杉本が右足薬指を痛めて骨折の疑いが出ている。不可抗力とはいえ、J1で5位のC大阪、J2で2位の松本にとってエース離脱は大きな痛手。森保監督は「お話ししないといけない」と、自ら説明し頭を下げる必要性を感じた。

確かに、これ以上ない誠意だ。往復1万3000キロのジャカルタで7試合し、札幌で地震に遭い、大阪で緊張の初戦を終えた後だけに思いは伝わるはず。C大阪の後は、新大阪から新幹線と特急で3時間かけて松本へ向かった。本来は日本協会の関塚技術委員長の仕事だが、都内で委員会があった。その中で1日も早く謝罪したかった森保監督。周囲は多忙ぶりを心配するが「これから慣れていくのかな」と話す兼任を続ける上で、この律義さを基本スタンスとする。松本を訪れた後は、空路からの陸路で自宅へ戻った。【木下淳】