19歳のMF鈴木冬一(といち、湘南ベルマーレ)が第2の故郷・長崎で、東京オリンピック(五輪)への生き残りをかける。国際親善試合のU-22ジャマイカ戦(28日、トラスタ)に臨むU-22日本代表合宿が、25日に長崎市内で行われた。戦術練習で鈴木は主力組でプレーし、高校生活を送ったゆかりの地で代表デビューのチャンスが巡ってきた。長崎で学んだ犠牲心と戦う姿勢を発揮し、厳しいサバイバルを勝ち抜く覚悟だ。

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鈴木はゲーム戦形式の戦術練習で、主力組(3-4-3)の左ウイングバックに入った。身長165センチと小柄ながら、スピードを生かしたドリブルで左の攻撃を活性化させた。U-22日本代表入りは11月のコロンビア戦に続き2回目だが、先発デビューという大きなチャンスをつかもうとしている。「半年前まではこの年代の代表に入れるとは思ってなかった。チャンスが転がってきている中で、ものにするのも無駄にするのも自分。自分と見つめ合って、自分が出せる最大限の力を出したい」と闘志を燃やした。

鈴木にとって長崎は特別な地だ。大阪生まれで小学時代からC大阪の下部組織に所属していた。だが高校3年の時にC大阪ユースから、名伯楽の小嶺忠敏監督が指揮する長崎総科大付高へ転入した。「ユースで出場機会がなくて、自分を変えたいと思った。遠回りに思うかもしれないけど、人として成長することでプロで成功できると感じた」と転入の理由を明かす。

高校では試合で90分戦った後に、学校に戻って7キロ走を行うなど走力と気力を鍛え上げた。「自分を犠牲にしてもチームや仲間のために戦うことをすごく学んだ」。それ以前は、自分の好きなドリブルやシュートだけを考えていたが「犠牲心」の重要性を知ったことで、サッカーに対する考え方が変わった。それがプロ1年目で公式戦27試合に出場(1得点)し、チームのJ1残留にも貢献した。

第2の故郷での試合に、高校時代の友人やコーチらが駆けつける。「長崎で学んだ走る、戦う、チームのために戦うことを長崎の地で出して、成長する姿を見せたい」。日本代表戦士としてここで爪痕を残せれば、東京五輪へもつながるはずだ。【岩田千代巳】

◆鈴木冬一(すずき・といち) 2000年(平12)5月30日、大阪府東大阪市出身。C大阪の下部組織、長崎総科大付を経て19年に湘南加入。3月9日の鹿島戦でJ1初出場。5月のU-20W杯ポーランド大会メンバー。19年はJ1リーグ22試合0得点。尊敬する選手は川崎FのMF家長昭博。165センチ、61キロ。