【ドーハ(カタール)8日=岡崎悠利】サプライズ選出だ。W杯カタール大会に出場する日本代表の森保一監督(54)が、大胆な決断を下した。右アキレス腱(けん)の負傷で欠場となったDF中山雄太(25=ハダースフィールド)に代わり、FW町野修斗(23=湘南)を追加招集。ベテランの招集でも守備陣の補充でもなく、三重県伊賀市出身の「忍者FW」にかけた。この日、現地宿舎で取材対応し、選出の理由を語った。

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森保監督が新たに選んだのはFWだった。左サイドバック(SB)1番手だった中山の離脱で、追加招集したのはFW町野。8日の現地入り後、宿舎で取材対応して招集理由を語った。「まずは結果。日本人のJ得点王。さらに献身的に守備も貢献できるところも、E-1選手権や9月の活動で見せてくれた。攻守でオプションになる」。

守備陣にけが人は多いが、負傷離脱中のDF冨安が本大会に間に合うと7日の出国時に明かしている。左SBについては「伊藤洋輝も代表でプレーしている。酒井宏樹も冨安もできる。相馬も鹿島時代に左SBもやった。オプションとしてはいろいろ考えられる」と計算が立った。DFの補充よりも最前線に厚みを持たせることを重視した。

森保ジャパンで継続的にプレーしてきたMF原口元気(ウニオン・ベルリン)やFW大迫勇也(神戸)についても思いを明かした。「元気やサコ(大迫)はチームに貢献してきてくれて感謝しかない。最後、非情なことをしてしまった。総合的に考えた」。

町野は、平塚時代の中田英寿らが選ばれ98年フランス大会以来の湘南からのW杯代表入りとなった。クラブを通じ、「日本を代表してカタールの地で戦えることに、誇りと責任を持って行ってくる。プレーで恩返しできたら」と決意表明した。今季のJリーグでは日本人最多の13得点。1日の日本代表メンバー発表前後にも強烈にアピールし、10月29日のホーム鳥栖戦で2ゴール、落選後の5日のアウェー柏戦でも1ゴールと好調を示した。代表に初招集された7月の東アジアE-1選手権では3得点で得点王に輝いた。

三重・伊賀市出身で、ゴールパフォーマンスは両手を重ねて人さし指を立てる「忍者ポーズ」だ。プレースタイルは忍者さながらにDFの裏を突く抜け出しはもちろん、185センチの長身を生かしたヘディングや両足でもゴールを奪える万能型。すでに選出されているFW陣にはない高さも持つ。森保監督はJ3北九州でプレーしていた頃から東京五輪世代の1人として動向を追っていたという。「戦うオプションが広げられることを考えたい」と話し、MF伊東らのサイドアタックやポストプレーで、前線の起点にもなれそうだ。

一方で9月の欧州遠征では米国戦で途中出場も、シュートなしに終わった。町野は「腕の強さや足の長さ、強度、スピードが全然違った。つかまれてバランスも崩された。このレベルに慣れないと」と率直な感想を口にしており、ハイレベルな国際舞台での戦力としては未知数でもある。

それでも森保監督は1日のメンバー発表で語ったプロセスを貫いた。「ハングリーな気持ち、成功したいという野心を持っている選手を」。町野にとっては、7月の初招集からわずか約4カ月でつかんだW杯初切符。ゴールという結果で、指揮官の期待に応える。

 

町野修斗

◆生まれ 1999年(平11)9月30日、三重・伊賀市出身

◆利き足 右

◆経歴と成績 中瀬小-城東中-履正社高-18年横浜0試合0得点(J1)-19年北九州30試合8得点(J3)20年北九州32試合7得点(J2)-21年湘南31試合4得点(J1)

◆今季成績 30試合13得点(リーグ2位)

◆代表 7月の東アジアE-1選手権で代表初招集

◆パフォーマンス 得点後には地元・伊賀にちなんだ「忍者ポーズ」で「忍者ポーズは左手が上です」。

◆憧れ 幼少期の憧れはポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド

◆座右の銘 洗濯バサミの煮干し

◆最近よく聞く曲 君が代

◆試合前に必ず食べるもの うどん

◆好きな芸能人 (男性)霜降り明星、(女性)元E-girls佐藤晴美