角界きってのサッカー通が説く、強者に向かう心構えとは?

元横綱鶴竜の鶴竜親方(37)がこのほど日刊スポーツの取材に応じ、ドイツ、コスタリカ、スペインと強豪ひしめくワールドカップ(W杯)カタール大会E組を日本代表が突破する攻略法を授けた。決して大きいとはいえない体でも横綱まで上り詰めたのは、いつも挑戦者としての気持ちを忘れなかったから。悲願の8強入りを目指す森保ジャパンに熱いエールを送った。

鶴竜親方は「どこが優勝するんだろうと予想するのは楽しいよね」と今大会の予選表を眺めながら妄想を膨らませている。やはり気になるのは日本のE組。優勝経験のあるスペイン、ドイツ、14年ブラジル大会でベスト8に輝いたコスタリカが並ぶ。

鶴竜親方 本当に『死の組』だね。最悪のことを考えると3連敗もある。初戦のドイツは厳しいと思うけど、2戦目のコスタリカに是が非でも勝って、勢いに乗ってスペインと戦いたいね。コスタリカに負けた時点で突破はないよ。

モンゴルにいた時からサッカーに親しみ、「場所はいくらでもあるから、友達と草原でボールを蹴って遊んでいましたね」と懐かしむ。初めてテレビでW杯を見たのは94年米国大会。サッカー王国ブラジルの多彩な攻撃に魅了された。最初に憧れたのは「怪物」の異名をとった元ブラジル代表エースのロナウド。この大会で出場機会はなかったものの、4大会連続でメンバー入りした逸材について「一瞬でビュン! と加速して抜きさり、足技もすごかったよね」と記憶がよみがえってくる。

大相撲の道に進んだ後も、サッカーへの興味は薄れなかった。テレビゲームや動画サイトで最新の海外事情をチェックしながら、4年に1度のW杯を迎えてきた。

その中でも日本の活躍は大きな関心事。メンバー表を見ながら、つい夢中になって「FWこなせる『力士』、あっ力士じゃない(汗)。FWをこなせそうな選手が全然いるね」と止まらない。それほどまでサッカーが好きなのだ。

強豪集うE組を突破するには、いかに挑戦者の気持ちを持って臨めるかが鍵を握ると考える。現役時代、同じモンゴル出身の横綱白鵬(現・宮城野親方)には通算8勝42敗。初顔合わせから20連敗と苦杯をなめた。場所が終わると稽古を重ね、土俵に上がる際には「先場所の俺じゃないぞ」という強い気持ちを忘れなかった。

鶴竜親方 「今までの自分じゃないところを見せなきゃ」「成長したところを見せたい」とか。チャレンジャーだからね。日本はきれいにボールをつなぐところがあるけど、打てるなら積極的にシュートしないと。外から打つことで、崩せることだってある。守備が良くても、得点が取れなきゃ勝てないよ。

陸奥部屋の部屋付き親方として後進の指導に当たる今、まずは13日初日を迎える九州場所(福岡国際センター)に全力をささげる。場所を終えてから、W杯観戦へ注力する。「スペイン戦は日本時間の12月2日。九州から家に帰ってきて、楽しく見れると良いですね」。九州の地で日本の活躍を祈りながら、来るべき時に備える。【平山連】

◆鶴竜力三郎(かくりゅう・りきさぶろう)本名・マンガラジャラブ・アナンダ。1985(昭60)年8月10日、ウランバートル市生まれ。01年9月に来日し同年九州場所で初土俵。06年九州場所で新入幕、12年春場所後に大関、14年春場所後に横綱昇進。幕内優勝6回。昨年3月に引退し、陸奥部屋付きの親方として後進の指導に当たっている。

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