日本サッカー協会(JFA)は4日、今夏のパリ五輪アジア最終予選を兼ねるU-23アジア杯カタール大会(15日開幕)に臨む同日本代表メンバー23人を発表した。

都内で会見した大岩剛監督(51)は、A代表経験のあるFW細谷真大(22=柏)やMF藤田譲瑠チマ(22=シントトロイデン)らを選出。一方で国際Aマッチデー(IMD)期間外で選手派遣義務がなく、海外クラブで活躍する主軸の招集が制限された。かつてない厳しい条件下で8大会連続の五輪出場を目指す。

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大岩監督の「お願い」がチーム編成の苦しさを物語っていた。報道陣に対し「大変注目していただいて、国民の皆さんにしっかり認識していただけるようにしていただければ」。自国開催で盛り上がった21年東京五輪世代に比べ、今回の認知度は低い。際立たせたのが難しい選考事情だった。

悩める胸中を問われた指揮官は、思わず笑みを浮かべた。「人数制限であったり、今大会に臨む選手を選ぶに当たって起こり得ること」と気丈だったが、実際は前日の深夜まで悩みに悩んで最終決定したという。4強を逃せばパリ五輪への道は断たれる。重責を感じながら選び抜いたメンバーは海外組5人、Jリーガー17人、大学生1人だった。

IMD外のため、世代のトップランナーであるA代表でも主力のMF久保建英(Rソシエダード)やGK鈴木彩艶(21=シントトロイデン)はもちろん、昨年11月のU-22アルゼンチン戦で10番を背負い2得点したMF鈴木唯人(ブレンビー)や、昨季のJベストヤングプレーヤー賞で現在はオランダで輝くMF三戸舜介(スパルタ)ら中核の招集はかなわなかった。若手の早期海外移籍が加速する中、国内中心の過去大会のように招集できなかった。

前例のない開催時期も壁となった。当初は1月に開催予定だったが、A代表のアジア杯が昨年から同月に延期されたため、この最終予選が春にスライドした。欧州はシーズン佳境。より選出が困難に。予選突破が決まるのもパリ本番の約3カ月前で、中東開催という暑熱的な困難も重なった。

予選自体も8年ぶり。前回は開催国で免除で、その前の16年1月リオデジャネイロ五輪予選は海外組がFW久保裕也とMF南野拓実の2人だけだった。日本の進歩が、予選という観点だけで見れば障壁と言える。

この世代は21年のU-20W杯がコロナ禍で中止になるなど国際経験も乏しい。04年アテネ五輪代表監督だった山本昌邦団長は「危機感しかない」と3月から警戒を緩めず「経験、成長、自信が少し足りない」。大岩監督も「厳しい戦いは間違いはないが、ラッキーボーイが出てくることを望んでいる。このメンバーで戦い抜ける」と力を込めた。五輪3枠へ「1つになって戦っていきたい」と一体感を大事に、いくら難局であれ日本の8大会連続切符だけは逃せない。【佐藤成】

◆国内組選考事情 国際ルール上は招集に拘束力がない中、慣例通り日本協会とJの強化担当者たちが調整し、各クラブ2人まで招集に応じることになった。以降の追加については個別交渉。最多の東京からは3人が招集されたが、常連組でA代表経験もある左サイドバックのバングーナガンデ佳史扶は選外となった。過去大会では、各クラブから上限3人が通例だった。

◆パリ五輪への道 アジア最終予選を兼ねたU-23アジア杯は4~5月にカタールで開催される。4チームずつ4組に分かれて1次リーグを行い、各組1、2位が通過。日本のB組は準々決勝でオーストラリアや開催国カタールなどが入ったA組のチームと当たる。大会3位まで五輪出場権を獲得。4位はギニアとの大陸間プレーオフに回る。その会場は、関係者によるとパリ。U-23アジア杯の終了後1週間以内に行われる予定という。また、前回の東京五輪でアジア最上位の4位だった日本が今回出場権を得た場合、日本協会によると、パリ本番は1次リーグD組に入る見込みだ。

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