日本代表のエースFW前田遼一(30=磐田)が9日、獲得オファーを受けているイングランド2部ウェストハムに向けて出発した。現地でメディカルとフィジカルチェックを受ける。施設なども視察してトップチームの練習にも部分合流し、1週間弱で帰国する予定。メディカル面などに異常がなく、就労ビザ問題がクリアされれば、年俸200万ドル(約1億5000万円)の2年契約で移籍実現となる。(金額は推定)

 慎重だった。夢の実現に向けて出発する成田空港で、前田は浮かれることなく冷静な口調で話した。

 前田

 ビザの問題があって移籍成立は難しいかもしれないですけど、挑戦を許してくれたジュビロに感謝しています。年齢的にも最後のチャンスだし、今を逃すと、もうヨーロッパでプレーする機会はないと思っています。移籍できるように、自分ができることはすべてやってみたい。

 アーセナルFW宮市やユトレヒトMF高木のように、10代から海外でプレーする選手が出始めた。だが前田には10代に負けない情熱と、代表エースストライカーとしての自負がある。

 前田

 海外挑戦は遅い感はあります。でも、できればヨーロッパでさらに成長したい。それを代表に持ち帰って、日本のために貢献したいです。将来的にはジュビロにも還元できればと思っています。

 ウェストハムからのオファーは、2年契約の年俸1億5000万円。11年度磐田でもらった6000万円の2・5倍。高く評価してくれた海外クラブのオファーに、プロとして魅力を感じるのは、当然といえる。

 即戦力として期待されており、今日10日からメディカルとフィジカルコンディションのチェックを受ける。昨年11月27日の神戸戦を最後に実戦から離れており、実戦感覚を高めるため、トップチームの練習にも部分合流する予定。残るは就労ビザの問題。過去2年間で代表公式戦75%以上出場が、ビザ発給の基本条件だが、特例で認められたケースも多いことから、クリアできる可能性もある。

 30歳の初挑戦が日本のW杯最終予選突破と、本大会での大躍進の原動力になるかもしれない。【盧載鎭】

 ◆前田遼一(まえだ・りょういち)1981年(昭56)10月9日、兵庫県生まれ。暁星高から00年磐田入りし、同5月の川崎F戦でJリーグデビュー。01年10月に日本代表初選出。07年8月22日のカメルーン戦で代表初出場。Jリーグ通算260試合115得点。09、10年度得点王。国際Aマッチ通算16試合6得点。183センチ、80キロ。夫人と1男1女。