北京五輪に出場し、2月にモロッコ五輪代表と対戦した元日本代表DF安田理大(24=フィテッセ)が、ロンドン五輪で対戦するスペイン、モロッコ、ホンジュラスのうち、1次リーグ突破へ鍵となる2戦目のモロッコの弱点を指摘した。

 北京五輪に出場した安田が、初戦で勢いに乗って決勝トーナメント進出の鍵を握る2戦目を迎えることの大切さを説いた。北京五輪では日本は3戦全敗で1次リーグ敗退。安田は「米国との初戦で前半に思うようなサッカーができず、そのままずるずるやられた」と振り返り「五輪は短期決戦やから勢いに乗ったもん勝ち。今回は初戦はスペインが相手やけど名前負けしてはダメ。初戦から勢いに乗って、モロッコ戦を迎えてほしい」と、初戦で当たる優勝候補スペインから勝ち点を奪い、モロッコ戦に挑むよう力説した。

 安田が所属するフィテッセがモロッコ五輪代表と対戦したのは2月28日。安田は前半、左SBとして出場。後半ベンチに退いた後に失点し、0-1で敗れたが、安田は当時の印象をはっきりと覚えていた。

 「しょせんU-23と思っていたけどめちゃくちゃ強かった。前線からきついプレスを掛けてくる。欧州でプレーしている選手も多く、欧州の組織とテクニック、アフリカの身体能力の高さが融合されている。中東をもっとすごくした感じ。めちゃくちゃ声も出すし、アフリカだけど個人技のチームではない」

 特に印象に残っているのは攻撃陣。ドリブルの上手な選手が多かったという。「オランダでも何人ものモロッコ五輪代表選手と対戦しているけど、勢いに乗せたらガンガン来る。だから波に乗せず、序盤に1回つぶしておけばシュンとなるはず。両ウイングも積極的に攻撃を仕掛けてくるけど、1回削ればこいつ嫌だなってなる。サイドを使ってくるので、両サイドと1トップの連係を遮断すればいいと思う」。

 守備にも弱点があり、前線の選手がプレスを掛けてくる際にボールを回すと、プレスが連動せず、中盤にスペースが生まれるという。「ボールを回すとマークが外れる時がある。そのスペースを生かせばチャンスが生まれる。前に蹴らず、しっかりパスをつないで相手のDFをかいくぐればいいと思う」。

 DFラインについては「2列目の選手が裏に抜ける動きをした時に対応が少しルーズになる。CBも長身で前には強いけど、後ろは体でカバーする感じ。走れる選手にスルーパスを出せばチャンスは生まれると思う。両SBの選手もスペースを見つけてオーバーラップすれば、相手にとって嫌なはず」と分析。また、モロッコの選手はすぐに熱くなる一面があり「しつこくディフェンスすればイライラして我を失う時もある。そうなるように持って行くのも1つの手だと思う」と、秘策も明かしてくれた。

 そして安田は最後に後輩たちに体験に基づいたアドバイスとエールを送った。「五輪には代表の試合とはまた違った独特の雰囲気がある。日本のスポーツ界の代表という意味合いもある。ホテルには選手しか入れないし、あまり自由に外にも出られないから家族にも会えない。でも、そういう環境の中でいかに試合に向けて準備できるかが大事。プレッシャーを感じずに楽しむつもりでやったらいいと思う」。

 ◆安田理大(やすだ・みちひろ)1987年(昭62)12月20日、大阪府吹田市生まれ。G大阪の下部組織で育ち、06年にトップ昇格。11年にフィテッセに移籍。08年北京五輪代表では第2戦のナイジェリア戦に出場した。国際Aマッチ7試合1得点。173センチ、65キロ。

 ◆モロッコ五輪代表

 2大会ぶり7度目の出場。98、99年に大宮、03年に京都でも監督を務めたピム・ファーベーク氏(56)が監督を務める。現在、予備登録の35人を発表しているが、18人の登録メンバーはまだ発表していない。アフリカ予選を兼ねたU-23アフリカ選手権では2勝1敗で1次リーグを突破し、アフリカ2位で予選突破を決めた。