18年ぶり出場の日大山形がPK戦の末、山口鴻城(山口)に敗退した。試合終了間際にGKを交代する作戦に出たが、相手にすべて決められてしまった。

 試合後、GK武内紫舞貴(しぶき=3年)の目は赤く腫れていた。「日ごろからPKは練習しているし、昨日の練習でも4本は止めていた。でも試合で我慢できなくて。先に飛んでしまい逆をつかれた。今回の負けは自分の責任です」。悔しそうに声を絞り出した。

 0-0の終了間際。PK戦のためにベンチから投入された。だが1本も止められず2-4で敗れた。自らを責めた武内だが、最後に選手権のピッチに立てたのは、3年間努力を重ねてきたことへのご褒美だ。

 今年3月の練習試合で右鎖骨を骨折。1度は復帰したが、6月に再び同じ箇所を折った。その間、GKのレギュラーを1学年下の菅原拓に奪われた。自らは手術を受け、右鎖骨をプレートで固定。トレーニングもままならず、県予選に間に合わない可能性もあったが、復活を信じて練習を続けた。「(選手権の)メンバーに入れただけでもうれしいことでした」。小学校の時に空手で全国3位になるなど身体能力は抜群。矢作監督もプレッシャーのかかるPK戦で武内を起用した。

 卒業後は東京の嘉悦大へ進学する。サッカーは続けないつもりだ。「(日大山形は)サッカーだけじゃなく、人間的にも成長できるところだった。大学ではこの悔しい思いを別のところにぶつけて、大人になれれば」。そう言って、スタジアムへ別れを告げた。