鹿島の日本代表FW金崎夢生(27)がリーグ初の1試合2得点をマークした。後半5分に左足、同43分に右足で今季2、3点目を決めて東京に2-0で勝利。2月にポルトガルから電撃復帰したエースが活躍し、チームは暫定2位に浮上した。上り調子で明日21日からの代表合宿に合流し、W杯ロシア大会アジア2次予選(24日アフガニスタン戦、29日シリア戦)に臨む。

 金崎の持ち味が凝縮された2発だった。0-0の後半5分、まず駆け引きに勝つ。鹿島DF山本の当たり損ねたシュートに反応。左足を懸命に伸ばし、すねの外側に当ててコースを変えた。山本にボールが渡る直前までオフサイドの位置にいたが、シュートを打つ前に東京DF徳永の背後へ潜り、再びゴール前に顔を出していた。「こぼれ球を狙っていたら、いい所に来た」。泥臭くも狙い通りのゴールを左隅に流し込んだ。

 5日の鳥栖戦に続くホーム2戦連発で波に乗ると、43分にリーグ戦182試合目で初の2点目を奪う。日本代表DF森重の裏を突き、MF柴崎の右クロスに右足を合わせる。走りながらのダイレクトボレーだったが、小学校6年まで励んだフットサル仕込みの技術で軽々と決めた。得点後は膝から芝に滑り込み、両手を広げる。弟分のMF鈴木のパフォーマンスを強奪し「これが格の違いだよ」と満面の笑みで言い放った。

 2月に電撃復帰した。ポルトガル2部ポルティモネンセとのレンタル契約が1月10日に満了。1度は退団したが、3冠獲得のために帰ってきた。ポルティモネンセによると、計10クラブ(日本3、中国1、欧州6)から獲得の打診があった中、欧州の可能性が消え、最後はJクラブとの一騎打ちになった。すかさず強化責任者の鈴木常務が2月上旬、2泊5日の弾丸行程で極秘渡欧。残留で基本合意した翌朝に翻意したことがあったほど欧州志向が強かった金崎も、直談判に心を打たれた。「日本なら鹿島しか考えられない」と決断し、復帰後4戦3発。日本人の得点ランク1位タイの結果で期待に応えている。

 日本のキャンプ期にポルトガルで公式戦に出ていたため、開幕から絶好調。この日も国内組代表で唯一の得点者になった。暫定2位を置き土産に、明日からW杯2次予選を戦うチームに合流。昨年11月のシンガポール戦で決勝弾を沈めた男は「しっかりデュエル(決闘)して日本を勝利に導きたい」と熱い血をたぎらせている。【木下淳】

 ◆金崎の1試合2得点 J1リーグ戦では出場182試合目で初。これまでの通算26得点はいずれも「1戦1発」だった。ナビスコ杯では過去に2度。昨年9月6日の準々決勝東京戦、同10月11日の準決勝神戸戦で記録し、鹿島のナビスコ杯優勝に大きく貢献した。ポルトガル2部のポルティモネンセ所属時は14-15年のリーグ戦で3度記録。