磐田が自力でJ1残留を決めた。負けても、争う甲府、新潟、名古屋の結果次第で残留が決まる状況下、仙台に1-0で勝利した。前半4分、MF上田康太(30)が左足で直接FKを決め、6試合ぶりに先制。この1点を守り切った。第2ステージ(S)から大失速の苦しいシーズンだったが、目標の「J1残留」を達成したことで、名波浩監督(43)の続投は決定的になった。

 名波監督のガッツポーズに呼応し、上田がベンチに向かって両こぶしを突き上げた。前半4分、ゴール前約30メートル地点。自ら倒されて得た直接FKを蹴ろうとするFWジェイ(34)を制し、上田が狙ったゴール右上に決めた。

 軽くカーブさせた高速シュート。現役時代の名波監督をほうふつとさせる鮮やかなキックで、チームは一気に活気づいた。背番号7、同じ左利きで「名波2世」と呼ばれるゲーム主将の上田。だが、今季はベンチ外の試合もあり「責任を感じる」と話すこともあった。それでも、最後に結果を残し、指揮官に「あのFKが勇気を与えてくれた」と言わしめた。

 最大の危機を全員で乗り越えた。試合前、ロッカールームでは、磐田から駆けつけた控え選手も入り、大きな円陣を組んだ。声を出したのはこの日、今季限りでの現役引退を発表したチーム主将のMF岡田隆(32)だ。藤枝東の同級生、DF大井健太郎(32)は「つらさをのみ込んで話してくれた。みんながまとまったと思う」と感謝していた。

 今季第1Sは勝ち点23で8位と健闘も、第2Sは2勝8敗7分けで勝ち点13と大失速。目標の「年間勝ち点40」にも届かなかったが、名波監督は安堵(あんど)の表情で言った。「生きてるなと。生きてて良かったと思います。クリーンシート(無失点)で終えるなんて、こんなに気持ちいいことはない」。

 今季14得点のジェイや、広島から期限移籍中のMF川辺駿(21)は退団は濃厚だが、続投が決定的な名波監督は「来季は13位からのスタート。高い位置に食い込めるかが課題になる」と言った。J1残留で名門復活への道はつながった。あとはどう前進するかだ。【保坂恭子】