前橋育英(群馬)のFW飯島陸(3年)が10大会ぶりの1試合4得点をマークした。初戦の初芝橋本(和歌山)戦で前半1発、後半3発と固め打ち。5-0の圧勝に導いた。過去に4得点した選手には、優勝と得点王に輝いた大前元紀(流通経大柏)大久保嘉人(国見)ら。続いた飯島が、前年度準Vの借りを返すべく吉兆のスタートを切った。

 1人で4度もゴールを揺らした。前橋育英のエース飯島が初戦から爆発。前半16分にスルーパスから右足で先制し、後半4分にも右足でこぼれ球を押し込む。14分にはロングスローから頭だ。今大会2人目のハットトリックも満足せず、28分に最終ラインからのロングパス1本で抜け出し、GKをかわして左足で流し込んだ。両足にヘッド。まんべんなく決めても「まだまだ決め切れたので50点」と快挙を謙虚に受け止めた。

 「公式戦では初めて」という1試合4発を夢舞台でやってのけた。選手権では07年度の大前以来10大会ぶり。00年度の大久保も達成しており、ともに日本一まで駆け上がった。このデータを聞くと「すごいですね」と驚きつつ「自分も全国制覇したくて(埼玉から越境で)前橋育英を選んだので」と姿を重ね合わせた。

 前回大会もタイガー軍団の10番を背負って準優勝。青森山田に0-5大敗の悔しさを糧に、5-0発進する力をつけて帰ってきた。大会後、高校選抜に選ばれてドイツ遠征に参加。「大きな外国人を相手にどう点を取るのか」考えた166センチは、体得した相手の視界から外れる動きでパスを引き出して得点を量産。50人を超えるJリーガーを輩出した山田監督を「上出来。いいタイミングで抜け出していたね」とうならせた。

 前日1日には、1大会10得点の記録を持つケルンFW大迫が「自分を超えてくれるとありがたい」と高校生にメッセージを残し、出国した。伝え聞いた飯島は「10点はすごいとしか昔は思えなかったけど、今は目標。簡単じゃないけど目指したい」。その先に悲願の初優勝がある。【木下淳】