FC町田ゼルビアFW鈴木孝司(28)が横浜FC戦で、3月4日の大宮アルディージャとのホーム開幕戦以来11戦ぶりに先発し、開始早々に同戦以来となる今季3点目を決めてチームを連勝に導いた。

 開始わずか1分9秒、MF吉浜遼平が左サイド深くから折り返したパスを、ニアサイドに入ったMF森村昴太がシュートしたが、GKにはじかれた。鈴木はそこに詰めて、右足でゴールに押し込んだ。チームメートが作った歓喜の渦にのみ込まれると、ガッツポーズ。「最初、森くん(森村)がシュートにいくと思ったので、こぼれを狙いにいった。FWらしいゴールになった」と胸を張った

 今季は2月25日の京都サンガとの開幕戦と大宮戦に先発して連発も、その後は足の肉離れで8試合、戦線を離脱した。ヒーローインタビューでは「最初、試合に出ていたんですけど、ケガをして自分も苦しんだ。出た時には結果が必要で、その気持ちがゴールに出た」と語った。ただ、試合後のミックスゾーンでは「(肉離れでは)落ち込まなかった。大丈夫でした」と前を向いた。

 その裏には、2度の左アキレス腱(けん)断裂による長期離脱があった。16年8月7日のレノファ山口FC戦で左アキレス腱(けん)を損傷し、全治6カ月と診断された。さらに17年1月に再断裂して手術し、同8月6日のアビスパ福岡戦に途中出場するまで、復帰に1年もかかった。

 その経験があったからこそ、「1年間、通してやっていくことでコンディションも上がっていく。ケガしてしまったのは残念ですけど、外からチームを見ることが出来た」と冷静になれた。「今、自分が入ったらこうしようと思い、悔しい気持ちを試合にぶつけようとやったことで生まれたゴール」と語る口ぶりは、静かながら自信がにじんだ。

 エース鈴木の存在の大きさは、数字からも分かる。7位と躍進した16年は、鈴木がアキレス腱(けん)損傷までに12ゴール、2トップを組むFW中島裕希が14ゴールと2人で26ゴールを挙げた。ところが17年は中島が11得点も、鈴木が長期離脱から復帰して12試合で2得点にとどまり、チームは16位に沈んだ。

 今季は鈴木がこの日のゴールで3点、中島が2点で、この日の勝利で町田は5位に浮上した。「もう1点取れたらチームは楽になった。1本、1本決めたらチームは上に行ける」と自覚している。一方でエースと言われると「まだ、そこまでじゃない。チームのためにやれば、結果は出る。自分が出ていなくても、チームとして勝っていましたし」と謙遜するが、ゴール後“孝司コール”が飛び交うスタンドの揺れ方は、ひと味違う。ケガで苦しみ、帰ってきた頼れるエース鈴木が、町田をさらなる高みへ引き上げる。【村上幸将】