大宮アルディージャDF酒井宣福(25)が、ジェフユナイテッド千葉戦で2アシストを決めた。兄高徳(ハンブルガーSV)がワールドカップ・ロシア大会に代表引退を発表したことを受け、心に期するものがあった試合で、自ら「ちょっとした変化」と感じた、闘志を前面にむき出す姿勢で、チームの逆転勝ちに大きく貢献した。

 酒井は前半30分、右サイドから前線に鋭く、強いスルーパスを送ると、MFマテウス(23)が受け、持ち前のスピードで一気にゴール前に突進して左足でゴール左にたたき込み同点。後半24分には、右から鋭いグラウンダーのクロスを送ると、FW富山貴光(27)がトラップし、右足で決めて逆転した。

 兄高徳が2日の決勝トーナメント1回戦・ベルギー戦に敗れた後、日本代表からの引退を表明した。試合後、兄について聞かれると「近いうちにあるのかなと薄々、感じていました。話をしたわけではないですけど、彼の言動というか、立ち位置というか、いろいろ考えて、そんなことを言い始めても、おかしくないなと、ちょっと感じてはいたんです。予感…そうですね。何も言われていないです」と、弟として代表引退の予感があったと明かした。

 同じプロの選手として「我々が感じられるレベルのものじゃない…僕の想像を超える重圧を背負っている部分が、彼にはあると思いますし。彼が決めたことは尊重すべき」と兄の決断を尊重した。世間一般には、27歳での代表引退を若い、まだやれるのでは? との見方も少なからずあるが「いいじゃないですか。彼もプロだから、自分の発言は、しっかり責任を持って言っていると思うし。彼には彼の意見がある。そこを決めるのは他人じゃなく彼自身。それは全然いいと思う。寂しさというか…まぁ、彼が決めたことだし、僕たちがどうこう言うことじゃないし」と語った。

 ただ、プロの選手としてではない、弟として一抹の寂しさと、その裏で決意も湧いた。「もちろん、代表で輝いているのを見るのは、うれしくもあり刺激を感じた部分もありましたけど、彼が代表を引退することによって、さらに自分たち…弟もいるので、頑張って兄だけじゃなく、下も頑張っていることを示さないといけないのかなと。彼が代表を辞める…残念と思うと同時に、やってやらなきゃな、という気持ちになりました」。ドイツ4部リューネブルクSKハンザでプレーする弟高聖(22)とそろっての、さらなる成長を心に誓っていた。

 兄高徳の代表引退発表後、初の試合で、その誓いを有言実行した。「やっぱり、少なからず気合は入っていました」。年代別代表を経験してきた千葉DF増嶋竜也(33)と、相手ゴール前での競り合いの中、激しく言い合う場面もあった。「負けたくない気持ちはお互い一緒だし、今まで熱くなることは、あまりなかったことなので、ちょっとした自分の変化なのかなと思います」と、兄の代表引退を受け、自らの変化も感じていた。

 兄とは会っていない。「彼も忙しい。僕ら(家族)は最後に1回、会うか会わないかだと思います」と苦笑した。【村上幸将】