前節最大のトピックスは、ヴィッセル神戸のスペイン代表MFアンドレス・イニエスタが、11日のジュビロ磐田戦で来日3戦目で初ゴールを決めたことだろう。前半15分、元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキが右サイドから斜めに出したスルーパスを、前進しつつもゴールを背にして右足で止め、ターンしてDFをかわすと、GKもかわして右足で決めた。ボールを止める、蹴るという基本の技術を高めれば、あのレベルになるということを証明する、Jリーグの歴史に必ずや残るワールドクラスのゴールだった。

 4位に浮上した神戸は今節、ホームで首位サンフレッチェ広島と対戦する。勝ち点差は16と開いているだけに、直接対決で詰めたいところだ。過去の対戦成績で見ると、公式戦は17年4月26日にホームで行われたルヴァン杯1次リーグで4-1と大勝したが、リーグ戦では15年4月4日のアウェー戦に1-0で勝ったのを最後に、直近の2連敗を含む2分け4敗と6戦未勝利が続いている。ホームでの勝利は、11年5月21日に1-0で勝った試合までさかのぼらなければいけない。当時、吉田孝行監督は神戸でキャプテンだったが、その試合には出場していない。イニエスタとポドルスキのホットラインで、リーグ戦未勝利の歴史にストップをかけたいところだ。

 一方の広島はV・ファーレン長崎と、世界で唯一の原爆の被爆都市をホームタウンとするチーム同士が、恒久的な平和を祈り、戦う「ピースマッチ」を行い2-0で快勝した。2位FC東京がガンバ大阪にアウェーで敗れたため、勝ち点差は8に開いた。J1全18チーム中、最少の15失点を誇る堅守で、神戸のワールドカップ優勝経験コンビを封じて独走態勢を固めたい。

 3位の川崎フロンターレは前節、清水エスパルスに勝って勝ち点を39に伸ばし東京に勝ち点1差と肉薄した。今節、ホームに迎え撃つサガン鳥栖にはリーグ戦は2連勝中。12年8月11日のホーム戦から3連敗したこともあるが、その後の9戦で負けたのは、16年8月13日のアウェー戦のみで6勝2分け1敗と圧倒。エースのFW小林悠は、直近の3試合全てでゴールを決め“鳥栖キラー”ぶりを見せつけている。

 一方、鳥栖の元スペイン代表FWフェルナンドトーレスも、スペイン代表の同僚イニエスタのゴールに刺激を受けているだろう。11日の浦和レッズ戦もノーゴールで5戦不発に終わったが、前線で起点となってチャンスを作り、また守備も献身的で鳥栖の15位浮上、降格圏脱出の原動力となっている。鹿島アントラーズから新加入のFW金崎夢生とも、4試合でコンビを組んでおり、そろそろ爆発を見たいところだ。

 下位では、13位の横浜F・マリノスが勝ち点4差の最下位・名古屋グランパスとホームで対戦する試合は、今後の行方を左右する試合になる可能性が高い。横浜は前節、湘南ベルマーレとの神奈川ダービーに1-0で勝って連敗を3で止めた。名古屋も今節対戦する横浜から新加入のDF金井貢史が、3戦目で移籍初ゴールを含む2ゴールと活躍し鹿島に4-2で勝って今季初の3連勝とエンジンがかかってきた。

 ホームの横浜から見ると、名古屋には2連続引き分けを含む1勝2分け、3戦未勝利と直近は勝てていない。一方、アウェーの名古屋から見れば、1-1で引き分けた5月5日の試合で後半35分に同点ゴールを決めた、元ブラジル代表FWジョーが3戦連発5ゴールと絶好調。さらにJ2松本山雅FCから新加入し、ここ3試合で2ゴールと好調のFW前田直輝は、17年は横浜でプレーしていた。横浜を知る前田の存在がカギになりそうだ。

 前節、宮本恒靖監督が就任4戦目で初勝利を挙げた17位のガンバ大阪は、名古屋と勝ち点1差をキープし、ホームで5位の北海道コンサドーレ札幌と対戦。鳥栖と並びG大阪と勝ち点1差ながら、得失点差で16位の長崎はホームで鹿島と、長崎と勝ち点2差、横浜とは並んでいる14位の柏レイソルはアウェーで東京と対戦する。ツネ様初勝利に沸くG大阪、ワールドカップ中断明け以降1勝1分け4敗ながら、上位陣ともほぼ五分の戦いを展開している長崎と比較し、攻めては守りきられて失点という試合を繰り返し、泥沼のホーム5連敗に沈む柏は、心配だ。